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第14回 国選弁護シンポジウム2017年11月18日



11月17日に横浜にて第14回国選弁護シンポジウム「もう待てない!逮捕段階からの全件弁護の実現を」が開催されたため,勉強のために出席してきました。

国選弁護シンポジウムは,日弁連が主催し2~3年に1回のペースで実施されています。「国選」と銘打っているものの,取り扱い範囲は刑事弁護全般にわたり(名称は国選弁護制度の拡充を求めていたころのなごりのようです),全国的にも最先端の刑事弁護の理論や活動が報告されるイベントということで,今回も全国各地から目算で400名程度の参加があっていました。

今回は「逮捕段階からの全件弁護の実現」をテーマに,第一部では勾留阻止に向けた弁護活動の実践例や各地の弁護士会の取り組みのほか,取調べの可視化を前提とした黙秘権行使の戦略的活用などの報告がなされ,第二部ではアメリカ・イギリス・ドイツでの逮捕直後からの弁護人選任の運用などの視察報告がなされています。

ここで,刑事弁護について少し説明をしておくと,罪を犯したと疑われる人物(被疑者)が逃亡し,あるいは証拠隠滅を図る恐れがある場合,裁判所の令状に基づき被疑者を逮捕し,さらに必要があれば裁判所の決定に基づき最長20日間(逮捕から数えると23日間)被疑者の身体を拘束することができます。
このうち,逮捕後にさらに身体を拘束する手続きを「勾留」といいます。
現在の国選弁護制度では,勾留決定がなされた時点で国選弁護人が選任されるため,勾留前には被疑者や家族が弁護人を選任しない限り,弁護人が付くことがありません。
ところで,法律上は逮捕されたら必ず勾留されるわけではなく,勾留をする場合には逮捕とは別に逃亡・証拠隠滅と言った勾留の要件を満たす必要があります。
実際に逮捕されたが勾留されず釈放されることもあり,また勾留決定が事後的に違法であったとして取り消される(取り消しを求める手続きを「準抗告」といいます)こともあります。実際に私も準抗告により勾留を取り消す決定をもらったことも何度かあります。

このように,逮捕されたとしても長期間の身体拘束を回避することが刑事事件の弁護活動の重要なものの一つになっているのですが,残念なことに現在の国選弁護制度では勾留がなされてからしか国選弁護人が選任されないため,事後的に勾留の可否を争うことしかできず,仮に勾留が取り消されたとしてもそれまでに数日要してしまい,身体拘束の不利益を完全に回避することができない,という問題があります。

過去は,逮捕後はほぼ100%に近く勾留がなされ,人質司法と批判されたこともありますが,現在では検察庁の勾留請求や裁判所の勾留決定が一頃に比べると控えめになっており,数パーセントは勾留されない(それでも95%以上は逮捕から勾留までがワンセット)ようになるなど,少しずつではありますが改善の兆しはあります。しかし弁護士としては「ホントにこの人20日も勾留しなきゃいけないの?」という事案がもっとあるのが実感であり,無用な身体拘束がなされている,という問題意識があるのです。

以上が前置きで,これを踏まえて今回の国選シンポジウムでは「不相当と思われる勾留に対する準抗告を弁護士会レベルで組織的に行い,その結果を集計して運用の改善を求める活動」の報告がなされました。結果として弁護人からの準抗告を待たず裁判所が勾留を却下する割合が増え,また検察庁も勾留請求に慎重になってきたとの報告がなされており,草の根レベルですがこのような活動の有意性が示されています。

また,勾留回避のためには逮捕直後・勾留決定前から弁護活動をスピーディに行う必要がありますが,その実現のために「逮捕されたとの報道が合った場合,被疑者からの要請がなくても弁護士が当番弁護士として出動して対応する」という取り組みの報告もありました。こちらも一定の成果を出しているようで,逮捕直後からの弁護士の支援の有効性を証明するものであると言えるでしょう。

事例報告では,逮捕直後から勾留回避のため身元引受人との調整や被疑者の出頭誓約書の取得に動き,勾留を回避したり準抗告を通したりしたケースの報告がありました。いずれの事例も,そもそも逮捕の必要もあったかどうか微妙な事案ですが,このような事例でも安易に身体拘束が認められているのが現状であって,この点はもっと一般にも理解してほしい部分です。

分量の都合でその他は割愛しますが,今回のシンポジウムでは逮捕直後(できれば逮捕当日)から弁護人が動くことができれば,勾留による身体拘束の長期化を回避できる可能性が十分にあることが示されており,今後の弁護活動のあり方を示唆するものでした。
もっとも,現在の国選弁護制度の下では逮捕直後の弁護活動は空白地帯になっており,また弁護士が手弁当で対応することも限界があります。また,勾留回避を狙っても家族や親族などの身元引受人の手配ができないと釈放を狙うことは困難です。その意味で,費用の面や弁護士へのアクセスなど課題がありますが,まずは「家族が逮捕されたらすぐに弁護士に相談を」ということをもっと一般に普及することが必要なのではないかと思わせる内容でもありました。

インフルエンザと早めの受診2017年03月17日

またずいぶん更新が滞ってしまいました。

ホームページのコラムも更新しないと,と思いつつ,日々の業務に追われてコラムのネタを考えるのがついつい後回しになってしまうのですが,今回はちょっと法律と関係の無い話でも書こうかと思います。

毎年寒くなると「インフルエンザが流行している」というニュースを見る気がします。
流行り物は興味がありますがインフルエンザは勘弁,という冗談も毎年言っているのですが,なぜか私は定期的にインフルエンザにかかる傾向があります。
特に「オリンピックの年にインフルエンザにかかる」のがほぼ定番になっており,2012年のロンドンオリンピックの年にも,2008年の北京オリンピックの年にもインフルエンザ(しかも毎回A型)にかかっています。
2016年(リオオリンピック)はインフルエンザにかからず,ついにジンクスも破られたと安心していた矢先,2017年3月初旬にまたもインフルエンザ(A型)にかかり,2016年シーズンと考えると,3回連続のオリンピック後にインフルエンザを発症したことになります。

これだけ定期的にインフルエンザにかかっていると,症状の雰囲気から「インフルエンザじゃ無いかな」と疑えるようになりまして,今回も「急に寒気がする」「39℃を超える発熱(最大40.1℃までいきました」「食欲減退やのどの痛みはない」という症状から熱が上がった時点でインフルエンザを覚悟し,休日だったのですが休日診療医に駆け込んた,という次第です。
病院では,まず熱を測って看護師さんがドン引きし(毎回熱が高いので凄く心配されますが,熱が高すぎて麻痺しているのか余り辛そうに見えないというおまけ付き),その後簡易検査をしたところ,当初はウイルスの反応が無い(時間がかかって反応が出ました)という流れ。
症状からインフルエンザを疑って受診するまでの時間が早いと簡易検査で反応が出ないので,通常は発症から丸1日程度での受診が望ましいと言われていますが,今回はかなり早めに受診したことになります。
ただ,今速やかな受診が功を奏して,抗インフルエンザ薬(イナビル)を速やかに処方してもらい(発症から48時間を越えると効果が薄いとのこと),翌日夕方には熱が下がるという,医者から見れば模範のような症状経過でした。
(ただ,感染拡大防止のため,その後数日間は自宅隔離となりましたが)

何でもそうですが,病気の場合は特に「早めの受診」が必要だな,と思わされた訳ですが,早めの受診をするためには,病気に気づける最低限の知識と,素人判断を行わず疑わしい場合は医師の判断を仰ぐ,ということも重要だと気づかされました。

法律問題も実は同じで,早めにご相談を受けた方が症状が重くなる前に対処できるので早めの相談を,と常日頃言っている訳ですが,いざ自分が病院に行くとなると,最初は「面倒だし寝てれば治る」と考えたのも事実でして・・・
今回は家族から「いいから病院に行け」と言われて渋々行った結果なので,今後は軽症でも早めに病院に行くことを心がけたいと思います。

(半田)

「立憲主義」と「民主主義」2016年12月06日

最近,憲法問題についてお話しさせて頂く機会がいくつかありました。

憲法問題の講演では,憲法の意味や位置づけが必ずしも共通認識になっていないことを意識し,まずは「憲法を知ろう」ということをお話しさせて頂いています。
その中で,最近は「立憲主義」ということに力を置いて話をしているのですが,たまたま「立憲主義」と「民主主義」のことを書く機会を頂きましたので,手前味噌ですが紹介したいと思います。

トランプ・ショックから考える民主主義

(一部抜粋)民主主義(デモクラシー)を一言で言い換えると,「国民による支配(政治)」です。
語源や由来は古代ギリシャで会議の度に参政権を持つ市民が集合して話合いを行い,ものごとを決定していたことに由来します。
とはいえ,国家規模が大きくなった現代では,すべての物事を国民の話合いや投票で決めること(直接民主制)は現実的ではありません。そこで,国民が選挙によって代表者を選び,代表者が政治を行うという「間接民主制」が採られるようになりました。
民主主義は「国家のあり方を決めるのは国民である」との考えを実現するものであり,王様が国のあり方を決める絶対王制と対置されています。

しかし,民主主義も万能ではありません。
民主的に選ばれた政府が独裁を行った例は,第二次大戦前のドイツを筆頭に多数存在します。
また,直接民主主義もその時々の雰囲気に流されたり,選挙に行った人の多数意見が結論となる結果,本当の民意とはかけ離れた結果がでる,という危険性をはらんでいます。
何より,全てを多数決で決めてしまうことは,少数者の権利や人権を蔑ろにする政治が行われてしまう危険性があるのです。
その意味で民主主義は万能ではなく,多数派の暴走や少数者の抑圧といった危険を有している制度である,ということは自覚しておかなければなりません。

この民主主義の欠点を補うのが「立憲主義」です。
立憲主義とは,多数決で選ばれた代表(政府)によっても制限できない国民の権利(人権)を憲法で定め,政府に憲法を遵守することを求めることで国民の人権を守り,政府の暴走を防ぐための制度です。
その中には,国家権力を司法・立法・行政の3つに分け,相互に監視・抑制することで権力の暴走を防ぐ,という三権分立も含んでいます。


アメリカ大統領選挙で民主的な手続によって選ばれたトランプ氏でも,憲法に違反する政治はできません。
このように,民主主義の結果が暴走しないようにしているのが,立憲主義であり三権分立の制度なのです。

中国地方弁護士大会 参加記2016年10月15日

弁護士は強制加入団体である日本弁護士連合会,及び各地の弁護士会(単位会,といいます)に所属して活動を行っていますが,そのほかにも高等裁判所管内を1グループとして,管内の弁護士会によって構成される連合会(ブロック弁連,と呼んでいます)があります。

各地のブロック弁連では,年1回の定期総会とそれに会わせたシンポジウム(医療や研究者の「学会」のような雰囲気です)を実施しており,予算・決算の承認等の手続きのほか,各地の問題意識に基づく「宣言」や「決議」が採択されています。

前置きが長くなりましたが,以下本題。
私が今年度の九弁連理事を拝命している関係で,九弁連からの派遣として,昨日鳥取市で開催された「中国地方弁連」(中弁連)の定期大会にお邪魔してきました。
さすがに鳥取へは時間がかかり前泊必須となりましたが,そのおかげで午前中のシンポジウムから参加することができました。

シンポジウムでは虐待や犯罪被害を受けた児童や障害のある方からの聞き取り技法である「司法面接」がテーマで,これまであまり弁護士会では取り上げられることのないものでしたが,当該分野の第一人者である北海道大学の仲教授の講演,及び各機関で司法面接に取り組まれている方によるパネルディスカッションを通じて,法律家はもちろん,学校や児童福祉の現場において司法面接技法を用いる重要性が理解できました。これは機会があれば詳しくまとめたいと思います。

午後からは定期大会。プログラムは九弁連と同じく予算決算の承認を経て宣言・決議案の審議,というものですが,じつは中弁連の定期大会(「中国地方弁護士大会」と題されています。なお九弁連は「九州弁護士会連合会定期大会」です。違いの理由は不明)は武勇がとどろいており,定期大会の宣言・決議案の審議は毎年議論が活発になされ,時には議案が否決されることもあるとか。
まさに「筋書きのないドラマ」を地で行くような大会が毎年繰り広げられており,その結果来賓を長時間待たせるほど時間が押すこともしばしば,と聞いていました。
原因がどこにあるのかはわかりませんが,中弁連大会の宣言・決議案は中弁連管内の各単位会がそれぞれ提案するという慣例があり(なお,九弁連は九弁連内の委員会からの上程を経て理事会から提案するため,単位会のカラーはほぼ出ません),この点でも異色の大会です。

今年も宣言1本,決議4本が付議され,各議案とも所定の時間を超過するほど多数の質問・意見がなされたほか,審議のなかで文案の変更が複数なされるなど,非常に活発な議論がなされていました。
今回は非常に議事がスムーズだったらしいですが,議場を封鎖して賛否を正確に確認する「精密採決」が今回も行われるなど,武名とどろく中弁連大会の片鱗をみることができました。

弁護士は議論してナンボ,という意見も出ており,運営側は胃が痛いと思いますがこのような大会が本来のあるべき姿なのかもしれません。その意味で大変勉強になった1日でした
宣言・決議については中弁連のホームページにも掲載されると思いますので,興味があればご覧ください。いずれも激しい議論の結果として充実した内容になっています

なお余談ながら,中弁連の名称は中国地方弁連のほか,名古屋高裁管内の「中部地方弁連」にも妥当するところ,昨年より中国弁連大会の懇親会で,向こう1年間の「中弁連」の名称使用権を賭けて中国地方弁連と中部弁連の理事長が勝負を行っており,今年も中国地方弁連が「中弁連」の名称使用権を得たようです。
というわけで,本稿では中国地方弁連の略称を「中弁連」としています。中部弁連の皆様にはご理解いただければと思います。

(半田)

日弁連九州地区夏期研修2016年07月16日

弁護士という仕事は,日々変化する法律や判例などの最新の知識をアップツーデートし,「常に、深い教養の保持と高い品性の陶やに努め、法令及び法律事務に精通しなければならない」(弁護士法2条)仕事です。

実際にも,法律は世の中のほぼ全ての事項に関わってくるものですから(科学的な研究と宗教問題以外はだいたい守備範囲です),法律の知識はもちろんのこと,それ以外のいわゆる「雑学」というものまで,知っていて邪魔になることはないと個人的には思っています。

とはいえ,日々の業務に追われる中で知識を更新し,あるいは新しい情報に触れる機会というのは結構大変です。そこで,弁護士会では種々の研修を実施し,知識を更新し,新しい情報に得る機会を準備しないといけません。
今回参加した日弁連夏期研修は,各地のブロック弁連単位で実施されている最大規模の研修の一つで,九州では九弁連の研修委員会が委託を受けて企画立案から実施まで行っています。

今回の研修は
現役のアナウンサー,アナウンススクール講師による「意見の伝えかた」
倒産法のエキスパート弁護士による「中小企業破産の申立における留意点」
そして,弁護士倫理に関する研修の3本立てでした。

私は所用があり午前中の研修のみの受講しかできませんでしたが,午前中の「意見の伝え方」の研修は,法律知識ではないが常日頃人に接する我々の仕事において意識すべき内容でした。
講演の内容としては,大きく分けて自分の声の特質を理解した上での話し方・発生方法と,受け手の言語パターンをふまえた説明の仕方,というものですが,いずれも「声」を仕事にされている講師ならではの説明で,非常に勉強になりました。
発声については,母音や抑揚を意識することで聞き取りやすさが格段に上がることや,同じ言葉でもどのような表情,どのような感情を乗せるかで印象が変わることなど,あまりこれまで意識していなかったお話でした。
裁判員裁判など弁護士がプレゼンテーションをする機会も多くなっていますし,各種講演をする機会も多いのですが,弁護士はあまりこのような方法論を意識して話をしているとは言えませんので,今後のために貴重な知識を得ることができました。

また,言語パターンというものについては,結論から言語化していく「オプション型」と思考過程を順を追って言語化していく「プロセス型」があり,両者は文法が違うので相手の言語パターンに応じた説明が必要,という話でした。
これは我々も法律相談において実感するところです。相談では,時間を気にしている様子ですぐに結論を聞きたがる相談者もいれば,逆にいつまで経っても何で困っているのかはっきりわからない相談者もおられます。いままではなぜこのような違いがあるのかわかりませんでしたが,今回言語パターンの違い,という説明を聞き,なるほど納得,です。
また,異なる言語パターンの相手には説明が上手くいかないことも多いのですが,例えばオプション型の相手にはまず端的に結論を示し,相手方が求める必要な理由を説明していくことで納得が得やすくなることや,逆にプロセス型では相手の思考過程をきちんと聴き手が整理し,理由から論理立てて結論を説明すると納得が得やすくなるとのことです。これは我々弁護士も法律相談で無意識のうちにやっている説明ですが,理論的に理解すると今後さらに改善することができるはずですので,この知識を得たことは大きな収穫でした,

倫理研修については,半分だけ受講をしていますが,昨今増えてきた法律事務所の広告についての問題点や非弁提携の危険性など,タイムリーな話題をコンパクトにまとめていました。

破産関係の研修については資料を拝見する限りですが,これだけで教科書がかけるくらいの情報を要点良くまとめられているもので,受講できなかったのが残念に思うほどです(実際受講した弁護士からは「すごく勉強になった」という感想がありました)

終了後には講師を交えての懇親会も行われ,講義では聴けなかった話などもうかがうことができました。これもライブで行われる研修の醍醐味の一つです。

ところが,残念なことにこれだけの研修でも参加者があまり伸びておらず,参加者をどう増やすかが毎年課題になっています。日々の業務が忙しい中,平日に1日時間を作って研修に参加する意欲がないのか,主催側が研修の魅力を伝え切れていないのか(半田は昨年まで九弁連研修委員,今年度は同委員会の担当理事として主催側の立場です),個人的には両方あると思いますが,これだけの研修を受けないのは率直に言って「もったいない」と思う次第です。

自分自身が研修を受けてブラッシュアップするだけではなく,研修の意義を広く弁護士に理解していただき,業界全体のスキル維持・向上につなげるためにはどうしたらいいのか,充実した研修を受けるたびに悩むところです。

(半田)

18歳選挙権と主権者教育2016年07月02日

参議院選挙も公示され,いよいよ選挙ムードになってきました。

平成28年7月の参議院選挙から「18歳選挙権」が採用され,教育現場は「主権者教育」をどうするかが目下の悩みのようです。
佐賀県弁護士会では,これから選挙権を得る学生・生徒さん向けに,選挙の意味や民主主義と立憲主義の関係などを説明する講師派遣を今年から行っており,
半田もその講師として2校で講義を行ってきました。

講義では,「選挙って何だろう?」というテーマを設定し,「選挙に行ったってどうせ同じではないか」「政治と自分たちの生活は関係ない」というような若年層の考え(誤解)について,じつはそうではないんだよ,ということを説明するとともに,「政治=多数決」から少数者の権利を守るためのルール(憲法)を説明してきました。

自分自身もそうでしたが,なかなか政治は身近に感じることができないと思いがちです。
そこで,今回の講義では例えば消費税の問題や登録13年以上の自動車の税金が割増になっていることは,まさに生活と政治が密着する問題ですし,奨学金や就職支援・ブラック企業対策など,若年層に身近な政治的課題があることを説明しています。

また,選挙に行っても行かなくても結果は変わらない,ということについては,小さな一票でも投票に行かないと絶対に変わらないし,結果に対し白紙委任をしたことに等しいことや,仮に投票した候補者が当選しなくても「反対票」という形で一票が活きること,接戦になればなるほど,当選した政治家が反対意見を意識した政策をとるであろう(そうでないなら次回落選する)ことなどを話しています。

弁護士会側もまだまだ試行錯誤の状態のなか,十分にわかりやすい講義ができたかはちょっと心配ですが,アンケート結果を拝見する限り概ね好評を頂いたようで何よりです。

本当は学校だけでは無く,大学生や特に若い世代の社会人向けにも同じような講義をしてみたいと思っていますが,まずはできるところから少しずつでも伝えていけるよう頑張ります。
(半田)

鳥飼重和弁護士の講演2016年03月10日

先日福岡県弁護士会主催で行われた,鳥飼重和弁護士による講演に参加してきました。

鳥飼重和弁護士というと,経新聞の企業が選ぶ弁護士ランキングで,2013年税務部門1位,2014年企業法務部門10位という税務・企業法務のエキスパートなのですが,企業法務系の弁護士のイメージとはちょっと違い,大変「熱い」方でした。
研修は企業法務や税務のやり方ではなく,「弁護士が税務訴訟においてどのようにコミットすべきか」というものでしたが,内容はいずれも「なるほど」と思わせられるものばかりでした。

盛りだくさんの講演でしたが,覚えている限りでエッセンスを書いていくと・・・
「税金は法律に従って課税されるので,税務は法律解釈の問題である」
「問題が起こる前に法律に従った対処を行わないと,事後的なフォローは非常に困難」
「現在,弁護士は税務訴訟の段階から依頼を受けることが多いが,それでは遅すぎる」「法律のプロである弁護士が,自由度の高い経営段階から適切な法的知識・法解釈に基づき手続に関与することで最良の結果を導くことができる」
というものでした。

確かに,申告する前であればリスク要素を最大限下げることもできますし,何より鳥飼弁護士の講演では,多くの企業で「法律家の目からみて,あまりにも『雑』な処理がなされている」のが問題の根源である,という指摘があり,なるほど,と思わされる指摘でした。

財務・企業法務以外でも「もっと早く弁護士がアドバイスしていれば」と思えるケースは枚挙にいとまが無いわけで,鳥飼弁護士の指摘はもっと広く伝わるべきだと思います。
鳥飼弁護士は「戦わずして勝つ」「戦っても勝つ」をポリシーとされていますが,その発想は実に慎重で,「法令遵守・手続遵守により負ける材料を極限まで減らす」ことで「紛争で勝つのではなく,紛争リスクを回避する」ことをされていると感じました。
弁護士はリスクマネージメントが仕事なので,鳥飼弁護士のように想定されるリスクを広く予想し必要な警告をすることがほとんどであり,リスクを取らないと結果が出せない経営者からは煙たがられる存在だと思いますが,それでも鳥飼弁護士が高く評価されているのは,鳥飼弁護士がポリシーとされている「経営者の最高の参謀になる」弁護士であるからに他ならないのでしょう。

まねをしようとおもってもできるような相手ではありませんでしたが,得るものもたくさんある講演でした。
(半田)

相続手続きはやっぱり早いほうがいい2016年02月14日

昨年9月に 「相続手続きは早いほうがいい?」として、被相続人(相続の対象となるお亡くなりになった方)の死後相続手続きまでに時間がかかった場合について、
「相続手続の時効」や「相続放棄の熟慮期間」、「遺留分等の時効」などを紹介しました。

しかし、相続手続きに時間を要すると、ほかにもいろいろと問題が出てきます。
今回は前回のコラムの続きとして、不動産がある場合で相続に時間がかかった場合の問題点を紹介していきたいと思います。

まず第1に、相続人(相続を受ける側)の状況が変わることがあります。
最も多い問題としては、相続人が高齢になり判断能力等を欠くようになった場合、成年後見人等を選任しないと相続ができなくなる、ということです。
わかりやすく説明すると、お父さんとお母さん、兄弟2人の家族でお父さんが亡くなって、その後10年くらい相続手続きをしなかったところ、お母さんが認知症になってしまい施設に入ることになったので、施設の費用を作るためにお父さん名義だった自宅の土地建物を売却する、ということを考えてみます。
この場合、土地建物は亡くなったお父さんの名義ですので、そのままでは売却や登記ができません。そこで、相続手続きをしなければなりませんが、お母さんが認知症で判断能力がなくなっている場合、お母さんに成年後見人をつけないと有効な法律行為(相続の話し合い等)ができなくなるのです。
成年後見人を選任するには家庭裁判所への申し立てが必要で、その資料として現在の判断能力についての医師の診断書が必要になるなど、いろいろと負担が増えてしまいます。お元気なうちであればスムーズに相続手続きができたのに…というケースは私もよく目にすることがあります。

あるいは、お父さんの没後に兄弟が亡くなった場合、亡くなった相続人に妻子がいれば、相続分を妻子が相続することとなり、不動産の登記や処分には妻子を含めて全員の印鑑が必要になるなど、相続手続きに関わる人が増えていくということもあります

また、よくご相談を受けるのは、相続財産にかかる税金(固定資産税)の取り扱いです。
相続手続きが未了のままの不動産については、相続人のうち課税庁からみて一番徴収しやすい人に請求がなされることが多いのですが、課税庁との関係では相続分にかかわらず全額を納税する必要があります。
相続分を超える納税については、他の相続人に請求するか遺産分割時に考慮することが一般的ですが、精算されない場合も多いため、相続手続きに時間がかかると納税額もばかになりません。
精算するにしても、よけいなもめ事を増やしてしまう可能性もあるのです。

さらに、不動産を空き家のまま放置していると屋根瓦が飛んだり建物が壊れたりして近隣に被害を生じた場合、所有者である相続人全員が賠償責任を追うことになってしまいます。
そのほかにも、価値の低下(特に建物は傷みますので)により、早期に処分した場合と比較して資産価値の下落が生じることなど、色々と問題を生じさせる結果となってしまいます。

特に不動産がある場合、相続手続きはやっぱり早いほうがいい、ということになるのです。
なお、遺言書や遺言執行者の指定がある場合には手続きをスムースに進めることが可能となります。これについてはまた機会があればご紹介したいと思います。

(半田)

非行少年に対する社会復帰後の支援とは2016年02月09日

2月6日~7日に福島県郡山市で開催された付添人経験交流集会に今年も参加しました。

付添人とは,事件を起こした少年について,成人の場合の「弁護人」と同様にその権利を擁護するとともに,少年を人格的に成長させるため非行の温床となった原因を克服していく過程を援助するために「付き添う」弁護士活動のことです。
少年事件は近年こそ若手弁護士を中心に積極的に関与するようになってきましたが,その活動のスキルアップのために,日本弁護士連合会の主催で毎年1回「付添人経験交流集会」が開催されています。

半田は縁あって弁護士登録直後から多数の少年事件を担当したことがあり,また個人的な関心の高い分野でもあるので,ほぼ毎年参加していますが,今年は大阪弁護士会子どもの権利委員会が企画した「審判後の少年の支援」という分科会が興味深い内容でしたので,少しご紹介したいと思います。

少年事件において弁護士が関わるのは,主に少年審判(大人で言う裁判)までであり,審判の結果少年院に送られた少年や,保護観察となって社会にもとってきた少年の面倒を見ることは,付添人の権限ではありません。
しかし,審判が終わったあとも「あの子はどうしてるかな。元気でやってるかな」と気になる少年がいることも確かです。
また,色々な事情により,社会に戻っても居場所が見つけられない子どもや,適切な指導者が見つからない子どももいます。
付添人活動を行う弁護士として,この「審判後の少年」の問題は気になっていたのですが,この問題について弁護士や「自立援助ホーム」のスタッフ,「全国就労支援事業者機構」の方が現在の取り組みと課題を報告されていました。
詳細については長くなるので割愛しますが,事件を起こしてしまった人(少年も成人も)の更生支援が現在では一部の篤志家に委ねられている状態が報告されるとともに,この問題についてはもっと取り組みを進めるべきであることが報告されていました。
佐賀県では,大阪よりもさらにこのような「社会資源」が不足していることは否定できませんが,我々弁護士も更生保護についてもっと関心を向けて,社会全体で罪を犯してしまった人の立ち直りを支援できる体制を作っていくことの必要性を再確認させられる機会となりました。

法的紛争のパターン分析2016年01月12日

皆様,新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

年末よりいくつかの大型事件が大詰めを迎え,裁判所に提出する総まとめの書面作成等で忙殺されていたこともあり,ホームページの更新をサボっていましたが,今年は心機一転,毎月1回を目標になんか書いていこうと思います。

というわけで新年最初の更新は「法的紛争のパターンはあるか」というお題。
いきなり難しい話に見えますが,よろしければおつきあいください。

突然ですが,「三段論法」という言葉があります。「大前提」と「小前提」から「結論」を導くというやつです。
法律学においても三段論法は重要な思考方法であり,特に用いられるのが「法的三段論法」と言われるものです。
法的三段論法とは大前提である「法律」に小前提となる「事実」をあてはめ,「結論」を導くということになります。
一例を挙げると,「人のものを盗んだら窃盗罪とする」という法律(刑法)に,「被告人は被害者の財布を盗んだ」という「事実」を当てはめることで,被告人を窃盗罪として処罰できる(結論),というものです。
我々は,意識的にか無意識にかの違いはあれど,多かれ少なかれこういう思考方法を自然と行っている部分があると思います。

…この時点で十分難しいし,本題が見えてこないですね。まあもう少し読み進めてください。

さて,なぜこのような難しい話から入ったかというと,我々法律家が取り扱う紛争は,この法的三段論法の枠の中でパターン化ができるのではないか,と思うからです。
事件では,皆さん「結論」に納得がいかない,あるいは自身に有利な「結論」を導くべく色々と行動します。ここで法的三段論法の論理を見ると,結論を有利に展開するためには,3つの点が問題になるのです。

まずは,小前提である事実の有無です。法律の解釈にかかわらず自身に有利に運べる事実があれば,それはそれは有利に紛争解決を進めることができますし,逆に不利な事実があった場合,劣勢を覆すのは至難の業です。
ところが,この事実がくせ者です。
事実があったかなかったは,そのとき現場に居合わせた人でない限り解りません。そのため,「事実の有無」が争われることが法的紛争のパターンとして多数あります。
これは,刑事事件の犯人かどうか,というところから,お金の貸し借りがあったかなかったか,というレベルまであらゆる場面で問題となります。
このパターンの場合,事実を証明できる(あるいは事実の存在を疑わせる)証拠があるかないか,が勝敗を大きく分けることになります。

事実の点ではもう一つやっかいな要素があります。事実は一つ!といいたいところですが,主張する人によって事実が違ってくる場合があります。これは,ある「生の事実」にどのような意味を与えるか,すなわち「事実の評価」が異なってくるからです。
例えば,お金の貸し借りで紛争になっている場合で,お金を借りたとされる側が大型テレビを現金一括で買っていたという事実があるとしましょう。これをお金の貸し借りと無関係と捉えるか,テレビを一括で買える位のお金を持っていたと考えるかで,その事実の位置づけは大きく変わってきます。
あるいは,従業員の非違行為を理由に懲戒解雇をする場合で,問題となった行為が果たして懲戒解雇に値するほどひどいものか,という点で見解の相違がでることもあるでしょう。
このような「事実の評価」の争いという点が二つめのパターンとなります。

三つめは大前提である「法律」の問題です。
ここも誤解されがちですが,法律というのは四角四面ではなく,ある程度の柔軟さ(解釈の余地)を残しています。なぜなら,あまりにもカッチリと決めすぎると,法律が予想していなかった事態や,適用の可否が微妙な事態(限界事例,といいます)において妥当な結論が図れないからです。
そのため,法律家はこのようなギリギリの場合,当該法律を適用していいのかどうかについて,法律の解釈をひねり出して妥当な結論を導く(あるいは依頼者の主張をかなえる)べく苦心を重ねることになります。

このような3つのパターンのうち法律家が専門とするところは,二番目の「事実の評価」と,3番目の「法の解釈・適用」です。
事実の存否については,正直言って証拠の有無が勝敗の圧倒的割合を占めるので,どれだけ証拠があるか=どれだけ几帳面に手続きを進めたか,ということが一番重要になってきます。
ただし,事実の有無が争いとなり,はっきりとした証拠がない場合にどのような事実がある(ない)と判断できるか(事実認定)というのは,解釈と並んで法律家(特に裁判官)が専門とするところになります。
多くの事件でははっきりした証拠がなく(証拠がないから紛争になるんですよね),その点で事実認定の技法というのは法律家の専門的知見として非常に重要な要素なのですが,ここで書くとどんどん脱線してしまいますので,また機会を改めて整理してみようと思います。

弁護士も事実認定の考え方は常に意識していますので,どんな証拠や事実があれば有利な事実を認定してもらえるか,についてはご相談いただくのが一番です。しかし,証拠もないのに裁判所に自己に有利な事実を認定させてほしい,というのは,正直厳しい御依頼であるとしかいえません。

これに対して,事実の評価については,適用される法律やその事実から導かれる別の事実を意識せざるをえないため,法律家が得意とする領分だと考えます。当該事実をいかに独りよがりな解釈にならず,うまく目標とする結論につなげていくか,というところは実務法曹の腕の見せ所であるかもしれません。
三番目の法解釈については,どちらかというと研究者の先生方の領分の側面が強いと思います。しかし,私たち実務法曹の日々の事件を解決する上で法律の解釈で頭を悩ますことも多く,これまで全く議論されていなかった未知の領域に突入した日には,まるで論文のような書面が完成することもあります。

ここまで書いてきたとおり,法的紛争をパターン化すると,やはり「事実」が重要です。事実の有無がはっきりした時点で決着がつかない場合,事実の解釈や法律解釈が出てくることになるのです。

ところが,紛争にはもう一つのパターンがあります。それは「感情的紛争」です。
事実には争いがない,法律解釈の余地もない,でも気持ちが納得いかない,というケースは,事実に争いがある場合と同じくらい出会う確率が高いものです。
これは法的三段論法から外れたところにありますので,法律家としてスパッと解決することはできません。できることといったら,依頼者の意向を少しでも実現できるように,相手方と交渉して譲歩を引き出すしかないのです。この部分は法律家というよりネゴシエーターの側面になりますね。
とはいえ,弁護士は交渉事も専門です。最終的には法律に従った解決になるため,交渉の場でも法律を意識して行う必要があり,その点でもう一つの専門分野と言ってもいいでしょう。

法的紛争のパターン化というのは,弁護士がどのようなことを仕事としているのか,ということを知っていただくことです。このコラムをご覧になって,「事実の有無が将来的に争いになりそうだな」と思ったり「事実や法律の解釈で相手と意見が合わないな」と思ったときは,是非弁護士にご相談になってくださいね。きっといいアドバイスをいただけると思います。
もちろん,当事務所でもこのようなご相談に対し,わかりやすく丁寧に対応させていただいておりますので,是非お気軽にご相談ください(宣伝です^^;)。
(半田)

中小企業と反社会的勢力との関係遮断~民暴大会長崎2015年11月14日

11月2日に長崎市で開催された,民事介入暴力対策長崎大会(民暴大会)に参加してきました。

民暴大会とは,日弁連と各地の県警・房追センターが全国で年2回開催しているもので,暴力団による民事介入暴力について時々のトピックを研究するものです。
今回は「中小企業・小規模事業者と反社会的勢力との関係遮断~利益供与の禁止を踏まえたリスク管理~」と題し,暴力団やその密接関連先との関係を持った場合,どのような問題が生じるかということや,関係を持ちかけられた場合,あるいは仮に関係を持ってしまった場合にどう関係を遮断するのか,ということがテーマとなっています。

内容は長崎県弁護士会有志による寸劇も交えつつ,コミカルに,しかし掘り下げた研究報告がなされており,大変参考になりましたので,すこしご紹介したいとおもいます。

1 反社会的勢力と関係を持つことのリスク
反社会的勢力と関係を持った場合,反社会的勢力から「食い物」にされるだけではなく,企業の社会的信用の失墜や,取引先や金融機関からの取引(融資)打ち切りに発展する場合もある。もちろん,役員の責任問題に発展する場合もある。
特に建設業など,公共事業や自治体との取引がある場合には顕著

2 関係を持たないためには
取引先の調査や契約書に暴排条項を記載するなど,事前の対策が有効
ただし多くの中小企業はそもそも契約書を作ってない場合もあるなど,事前対策はまだ不十分。
また,社長や役員の暴排意識を高めることも必要。

3 関係を持ってしまったらどうするか。
いったん関係を持ち,ブラックまたはグレー認定された場合,信用を取り戻すのは大変。
反社会的勢力との取引を遮断するだけではなく,今後も関係を持たないことを関係先に信頼してもらうために,第三者委員会による調査や役員等の引責も含めて徹底的に対策をする必要がある。

4 関係遮断の具体的方法は
暴排条項がある契約をしていれば簡単だが,実際はそうもいかない,
契約の解釈や民法の規定で個別に検討するとともに,弁護士や警察・暴追センターの支援を受けながら対応すべき

というものです。
民暴というと,反社会的勢力からの不当要求がイメージされますが,むしろ反社会的勢力と関係をもってしまい,自分たちも同類と見なされることの危険性が今回改めて報告されました。
このような事態を回避するためには,普段からの暴排意識が重要ですし,また契約書に暴排条項を盛り込むことや,早期に弁護士に相談して不測の事態を防ぐことが重要ではないでしょうか。
(半田)

佐賀新聞リレーコラム2015年11月10日

佐賀新聞リレーコラムの写真
佐賀県弁護士会の弁護士が地元紙(佐賀新聞)にリレーで寄稿しているコラムに,11月10日付けで半田の記事が掲載されました。

知っているようで知らない法律の話題を,というオーダーでしたので,よく誤解されがちな「民事執行」(いわゆる差押え)手続について書いています。
執行手続きは手続自体の問題と言うより,事前の資産(与信)調査や債務名義の取得が大変ですので,本当は回収不能になる前にご相談に来て頂くのが一番です。

また,民事上の権利の実現については,「訴訟制度と執行制度が車の両輪」と言われていますが,現在の民事執行手続は完璧と言うにはほど遠く,実効性に欠ける部分もあります。
とはいえ,ある程度調査と準備をしていれば大変強い武器にもなりますので,債権回収についてもお早めに弁護士までご相談頂ければと思います。

相続手続きは早いほうがいい?2015年09月24日

相続に関するご相談では,多くの事例において相続発生(ご家族が亡くなった時点)からある程度の時間が過ぎていることがあります。
ご相談を受けた時点で,「多重相続」(相続された方も亡くなり,さらに相続が生じている場合)となっているケースも珍しくありません。

確かに,家族が無くなっていきなり相続という生々しい話をしたくないという気持ちもあるでしょうし,まずは相続人間の話合いで解決しようとしたが,話合いが思ったより進まず時間がかかってしまった,ということもあるかもしれません。しかし,相続手続に時間がかかってしまった場合,法的にも事実上の面でも,あまり良いことはありません。
今回は相続に時間がかかることのリスクをまとめてみようと思います。


遺産分割手続きには時効はありません。
したがって,相続発生から何十年が経過しても,相続手続きを求めることは可能です。
ただし,相続開始から時間が経過してしまうと,財産は劣化し,または散逸してしまいます。
特に不動産は相続手続きが終わらない限り全相続人の共有となりますので,売却や管理に全ての相続人の同意が必要になるなど,管理処分に大きな支障を生じさせることになります。
多重相続となった場合,「おい・めい」や「いとこ」,「はとこ」で相続手続きをすることにもなります。この場合,相続が重なるごとにどんどん当事者が増え,必要な書類を集めるだけでも一苦労です。
また,関係性が希薄になればなるほど,連絡もとりづらく,話合いもまとめにくくなることが経験上多く生じています。
もちろん,時間の経過とともに証拠資料が散逸し,関係者の協力を得ることも困難になっていくのはどの事件でも変わりがありません。


また,遺産分割に付随する手続には,期間制限(時効)の問題があります。
有名なものとしては,相続放棄に関する3ヶ月の熟慮期間(民法915条1項)があります。相続開始を知ったときから3ヶ月以内に相続放棄をしないと借金も含めて相続したことになる,というものです。

他にも,遺言により法定相続分以下の財産相続できなかった場合,法定相続分の2分の1(直系尊属のみが相続人の場合には3分の1)について,遺留分減殺請求という手続が可能ですが,これは遺留分侵害の事実(遺言書の存在及び内容)を知ったときから1年以内に手続きをしないと時効により請求権が消滅してしまいます(民法1042条,なお相続開始から10年という時効もあります)
これを防ぐためには,期間内に内容証明郵便等の証拠が残る形で,遺留分減殺の請求を行っておく必要があります。
また,あまり多くはありませんが,相続人でないものが相続した結果,相続財産が流出したことに対する相続回復請求権というものがあります。
この請求権の時効は,相続権が侵害されている事を知ったときから5年(又は相続開始から20年,民法884条)です。
なお,相続税の申告にも期限があります(相続開始から10ヶ月)。

このように,相続それ自体には時間制限はありませんが,関連する種々の問題(特に遺留分減殺請求)についてはかなり短い期間制限があります。
これは,相続に伴い変化した法律関係が後々になって覆されることは法的安定性を害するという趣旨で定められたものですが,実際は相続人間でああでもない,こうでもないともめているうちに,期間制限はあっというまに過ぎてしまいます。
また,時間が経てばたつほど書類や資料が散逸したりして,特に紛争がない場合でも手続はどんどん面倒になっていきます。紛争がある場合にはよけいに拗れてしまうこともあり,時間をかけすぎることはあまりメリットはないと言えるでしょう。
私は相続について説明をする際「四十九日の法要が終わったあたりで相続の話を始めて,できれば百か日か初盆には,長くても一周忌には目処をつけた方が良いですね」とご説明しています。
前記の期間制限の問題もありますし,だいたい1年経って相続が終わらないのは,何かトラブルの種がある場合だと思います。
相続の話が進まない場合には早めに専門家のアドバイスを受けることが望ましいといえるでしょう。
また,自分が予期しない遺言書が出てきた場合には,遺留分減殺の時効の問題がありますので,遺言書のコピーを持って,早めに弁護士に相談してください。
相談するタイミングに早すぎる,ということはありませんので,どうぞお気軽にご相談頂ければと思います。
(半田)

日弁連夏期研修(沖縄)2015年09月07日

我々弁護士の仕事は,日々刻々と変化する社会情勢に対応することが求められます。
特に法改正や重要な裁判例が出た場合,業務にも大きな変化が生じることがありますし
それ以外にも技術や生活スタイルの変化(近年ではメールやスマホの普及などが劇的です)により,
これまでは大丈夫だったことが,今はそうはいえない,なんてことがよく生じます。

もちろん,法律や判例,社会情勢の変化以外でも,色々な技術やノウハウを学び,専門家としての研鑽とスキルの向上が求められることはいうまでもありません。

そのため,全国の弁護士が所属する日本弁護士連合会(日弁連)では,各地のブロック毎に年1回の学術研修を実施しており,九州では福岡と沖縄で毎年実施されています。
私は九州弁護士会連合会,及び佐賀県弁護士会の研修委員も務めており,研修と併催して委員会があることもあって,毎年夏期研修に参加していますが,今回は沖縄での研修をご紹介したいと思います。

沖縄での研修は,1日2コマ×2日間の計4コマで実施されています。
今年は法改正の分野から,労働法と刑事訴訟法(刑訴法の改正は本日現在,先送りになるとの情報がありますが)の改正後の概略についての研修と,
加藤新太郎氏(元裁判官)による,裁判官の心証形成を見据えた訴訟活動のあり方についての研修,そしてコミニュケーション方法をテーマにした倫理研修の4つでした。

いずれも専門的な内容ですので,子細は割愛して,印象に残った点を少しご紹介したいと思います。

弁護士という仕事は法律の知識のほかに,対立する相手方や裁判官を如何に説得するか,という事が求められる職業です。
もちろん,弁を尽くして説得しても結果が出ないことも多々ありますが,方法によっては有利にも不利にもなる可能性があること,特に裁判所に対しては,現場の弁護士が考えていることと,裁判所の受け止め方にずれがあった場合,本来は聞き入れられるはずの主張が裁判所に届かない,ということもありえます。
加藤新太郎先生の講演は,裁判官としての視点から,弁護士の職務遂行の留意点を述べられるものであり,過去に日弁連法務研究財団の研修での講演(過去のコラムにあります)を更に磨き上げた,大変参考になるものでした。
また,この説得のやり方が悪いと,弁護士の責任問題にもなり得るというのが倫理研修のテーマであり,この点もなるほど,と思わせる充実した内容でした。

弁護士は日頃から文章や口頭で主張し説得することを繰り返していますが,何も考えずに行うのではなく,問題を生じない方法や,効果的な方法を考えないといけない,ということなのでしょうね。

佐賀県弁護士会「いじめ防止授業」のご紹介2015年06月24日

弁護士は通常業務の他,所属する弁護士会の活動として種々の活動を行っています。

佐賀県弁護士会は総勢98名(平成27年6月現在)と,九州で唯一所属弁護士が100名以下の小規模な弁護士会ですが,ここ数年で若手弁護士が増えたこともあり,少人数をものともせず,積極的に各種活動を行っています。
その中で今回は,子どもの権利委員会(少年事件や虐待問題など,未成年者に関わる問題を取り扱う)と,法教育委員会(学校や市民向けに,法的思考や法的観点を学ぶ「法教育」活動を取り扱う)委員会のが合同で,小中学校向けの「いじめ防止授業」をご紹介したいと思います。

いじめによる悲惨な結果が発生した事件が後を絶たないことは既に説明するまでもありません。
弁護士会としては,「いじめは人権侵害である」というスタンスの下,いじめが発生(顕在化)した後の対策ではなく,もう一歩進んでいじめをさせないために,いじめによる不幸な結果が生じないためにどうすればいいか,という視点で,各学校に弁護士を講師として派遣し,「いじめ防止授業」を行っています。
これは全国的な取り組みですが,佐賀県内でも既にいくつかの小中学校で授業を行っております。
先日は佐賀大学教育学部附属中学校で,1年生を対象に授業を実施し,公開授業として報道もされています。
以下,佐賀新聞の記事を引用してその様子をご紹介したいと思います。

(6月19日付け佐賀新聞ウェブサイトより)

中学生がいじめについて考える「いじめ予防授業」が16日、佐賀市の佐賀大学附属中であった。現役の弁護士が講師を務め、いじめで子どもが自殺に追い込まれた事件や法的な視点にも触れながら、いじめの怖さを伝えた。

 県弁護士会子どもの権利委員会の下津浦公弁護士が1年生の4クラス158人を対象に行った。授業では、下津浦弁護士が「いじめだと思うこと」や「いじめをされたらどんな気持ちになるか」を生徒たちに質問。生徒たちは「スマートフォンのSNS機能を使った悪口」などをいじめと思うと回答し、いじめられたら「傷つく」「恥ずかしい」「嫌だけど親に心配をかけたくない」などの気持ちになると答えた。

 その上で下津浦弁護士は、過去にいじめが原因で中学生が自殺に追い込まれた「鹿川君事件」などを例に挙げ、いじめが取り返しのつかない事態を招くことを指摘。「いじめは安全で安心な学校生活を送る権利の侵害。人をいじめていい権利は誰も持っていません」と強調した。

佐賀新聞のサイトはこちら

当事務所でも,半田が子どもの権利委員会,法教育委員会に所属し,いじめ予防授業の推進にも関わっております。
こういう活動も弁護士として求められる業務として,皆様にご紹介させて頂きます。

交通事故における保険の重要性とは2015年04月20日

4月17日のニュースで,センターラインオーバーの車と対向車が衝突した事故で,対向車に「過失がないとも認められない」として,対向車の運転手がセンターラインをオーバーした車の助手席に搭乗していて亡くなった方への賠償義務を負うことを認めた,という判決が出されたと報じられました。

具体的な事実関係や判決全文,訴訟での主張立証構造が分からない以上,判決内容の当否に踏み込むことはできませんが,この判決は自賠法や自賠責保険,任意保険の重要性について色々と示唆に富むものだと思います。
そこで,今回は交通事故にかかわる法律や保険についてちょっと整理してみたいと思います。

まず,交通事故を起こした場合,物損・人損のいずれについても民法709条により過失がある当事者は賠償義務を負います。
車と車,車とバイクの場合,双方が注意していれば事故を回避できたとされる場合がほとんどですので,双方当事者に「過失」が認められ,過失相殺により自分の過失の割合について賠償義務を負います。よく7:3とか8:2とか言うのはこの過失割合です。
なお,交通弱者である二輪車・自転車・歩行者については,同じような事故でも弱者保護の要請から,車と車の場合に比べて過失を少なく見ることが一般的です。

この「過失」について民法では「被害者において,加害者に過失(事故を引き起こした原因となる不注意)があること」を証明するよう求められています。
しかし,事故の状況に争いが出れば特に,相手方の過失をきちんと証明することは困難を伴います。
その結果,事故で怪我をした(場合によっては死亡した)にもかかわらず,相手の過失を証明できないが故に賠償を受けられない,という被害者に酷な事案が生じ得ます。
そこで,「自動車損害賠償補償法(自賠法)」という法律が定められ,
 ① 人身事故については加害者が自らに過失がないことを証明しない限り賠償責任を負う(自賠法3条)
 ② 強制保険である自賠責保険を作り,最低限の賠償が受けられる ようになっています。(なお,自賠責保険に加入していない車による事故に遭った場合でも,政府保障事業により自賠責と同等の保障がなされます)。

そして,民事裁判においては「立証責任」があり,法律の規定に基づいて必要な事実関係の証明ができない場合,その事実がなかった(有利な効果が発生しない)ものとして取り扱われます。人身事故の場合,裁判官が過失の有無について「真偽不明」となった場合,自賠法の規定により被告側に賠償義務があると判断されることになります。(物損事故の場合は民法709条の原則どおり,過失について真偽不明の場合は賠償義務が否定されます)

今回のニュースで話題になった判決は,報道を見る限りこの自賠法の適用の判断を行ったものであり,対向車両側で真偽不明を超えて無過失の立証ができなかった,と判断したものだと思われます。

事故の状況や主張立証が十分なされたかなどが分かりませんので,これ以上踏み込むことはできませんが,もしかすると無過失の立証が困難な事実関係だったり,あるいは十分な証拠が手元になかったのかもしれません。
こう考えてみると,一概に判決がおかしいと言い切れる事案ではないのかもしれません。


問題は,なぜこのような裁判が起こされるに至ったのか,です。
ここも子細が分からないので想像になりますが,報道ではセンターラインをオーバーした車について,当該車両の任意保険が支払われなかった,との話があります。
亡くなった方が搭乗していた車の自賠責保険が支払われたかどうかは不明ですが,仮に自分の車両の自賠責保険が支払われていたとしても,死亡の場合の上限は3000万円であり,いわゆる裁判基準の賠償額にははるかに及びません(追記:搭乗車両の自賠責保険は支払対象外であったとの情報もあります)。
複数台の自動車による事故の場合,自賠責保険は各当事車両からそれぞれ支払われます(自分が運転していた車両は除く)ので,このような場合搭乗車両と対向車両それぞれに自賠責保険の請求をすることもおかしくはありません。

しかし,通常,相手車両の無過失の可能性が相当程度ある場合や,相手にほとんど過失が認められない場合,相手の賠償責任を問うことはあまり行われません。それはなぜでしょうか。
実は,自動車保険には,「自動車事故で自分(運転者)や同乗者が怪我をした場合」の特約があります。「搭乗者損害」や「人身傷害保険」というものです(両者の違いは特約の要否や賠償額,賠償範囲です)
例えば,自分の一方的過失で事故を起こした場合や,自損事故(自爆)の場合でも,人身傷害(搭乗者損害)保険は支払われることがほとんどです(詳細はご契約されている保険の約款をご確認ください)。
双方に過失がある場合でも,相手方からは過失割合に応じた賠償しか受けられませんので,人身傷害保険のほうが補償額が大きいことも考えられます。ですので,相手に過失がない可能性がある,または自分側の過失が大きい場合には,人身傷害保険で保障を受けて,相手方へ請求をしないこともあるのです。

しかし,今回のニュースでは,保険の保障範囲の問題で,車の所有者(お亡くなりになった方)の任意保険が使えなかったようです。
また,運転者が別途任意保険に加入していれば,いわゆる「他車運転特約」により,運転者自身の保険が使えるのですが,これもなかった(運転者が車を保有していない等)のかもしれません。
そうだとすると,対向車の自賠責保険を頼って賠償を求めるためにこの裁判が起こされたと考えれば,このような裁判が起こってしまった原因もある程度納得ができます。

こうして考えると,ニュースでは判決の結論のみがクローズアップされていますが,実際には保険の規定や保障範囲を巡って,もっと色々なポイントがあるように思えます。

亡くなった方を責めるわけではないのですが,「きちんと保険の内容や範囲を理解していれば」「運転を頼んだ人に保険がかかっていないことが分かっていれば」,事故が避けられなかったとしても,当事者全員が不幸になるような裁判は避けられたのかも知れません。

実務に携わっていて,事故は全ての当事者を不幸にすること,保険の理解が不十分だと不幸をより拡大させてしまうことがあること,を常々述べていますが,今回のニュースもまさにそのようなケースだったのかもしれません。何ともやりきれません。


(2015/4/24追記)
福井の判決については全文が裁判所ホームページで公開されています。
また,原告代理人の弁護士が判決の報道についてコメントも出されています。
判決全文を読む限り,対向直進車の過失を観念することも不自然ではない事案だと思われます。
ただし,この判決から考えるべきことは,交通事故に於ける過失判断のあり方ではなく,(原告代理人のコメントにもありますが)任意保険の条件により,必要な保証が受けられないことがありえる,ということでしょう。(半田)

未成年者による事故についての最高裁判決2015年04月13日

Q:先日,子どもの蹴ったサッカーボールが路上に飛び出したという事故で,最高裁判所の判決が出されました。子どもによる事故の賠償について,どのような理解をすればいいのか教えて下さい。

 民法では,自己の行為の善悪や危険性を理解できない場合(責任無能力者),賠償責任を負いません。未成年者の場合,概ね12歳前後が分岐点といわれています。
 したがって,小学生であれば責任無能力者として賠償義務を負わないことが多いといえます。
 ただし,本人が責任を負わない場合には,責任無能力者を法律上監督する義務を負う者(未成年の場合は親)が,監督義務を怠っていない,又は監督義務を果たしていても事故が起きた場合を除き,賠償責任を負うことが定められています。
 今回最高裁判所の判決が出されたのも,この親の監督義務に関する判断です。
 これまでは,監督義務者の監督義務について高いハードルを設定し,監督義務を果たしたと認められるケースは多くはありませんでした。

 この点について,近時注目すべき最高裁の判決(平成27年4月9日最高裁第一小法廷)が出されました。
 事案については紙幅の都合上省略しますが,できれば裁判所のホームページから判決を見て頂ければと思います。
 最高裁判所の判決では,親の直接の監視下にない場合で,「通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合」については,具体的にその結果が予見でき津場合を除き,ある程度一般的な指導監督を行っていれば,監督義務者としての責任を免れると判断しました。
 この判例を前提にすれば,例えば運動場でキャッチボールをしていて,ボールがそれて通行人に怪我をさせた場合でも,親としては「人が通る場所でキャッチボールをしてはいけない」「キャッチボールをするときは周辺に人がいないか注意しなさい」といった一般的な注意をしていればよい,ということになると思われます。

 もちろん,例えば道路でサッカーをしたり,プロレスごっこをするような,人に怪我をさせる危険性がある行為や,ガラスを割るなどの物を壊した場合には,この最高裁の考え方は及ばないので注意が必要です。
 また,イジメや暴力などの加害行為については,これまでのように厳しい監督義務を課すという判断もあるでしょうし,それが相当であると思われます。
 なお,13歳以上であれば未成年者自身が責任を負うので,この場合には民法714条による監督義務者の責任は生じません(個別に監督義務者独自の責任を問う余地はあります)。
 
 これまでの裁判の流れは,責任を負わない未成年者の行為で被害が生じた場合,被害救済のために監督義務者の責任を広く認めようというものであったと考えられますが,反面監督義務者に過大な責任を課していたことは否定できません。
 今回の最高裁判決は,監督義務者の責任を法律の規定に従って解釈し,双方のバランスを取ったと言えるでしょう。


 それでは,この最高裁判決を前提にすれば,私たちはどうしたら良いのでしょうか。

 まず,誰しも事故に遭う可能性はあります。これは逆に言うと,誰しも加害者になり得るということです。特に小さなお子さんをお持ちの方は,大なり小なり子どもが予想しない行動をしてヒヤッとしたことがあると思います。
 万一事故が起きた場合,今回の最高裁の基準を前提としても,前述のように親の責任が免除されない場合は一定程度残ります。子どもが大きくなったら,今度は子どもが責任を負う場面も出るかも知れません。
 万一責任を負う場面が生じ,死亡や重度後遺症などの重大な被害が生じた場合,賠償額は数千万~数億円になることもあります。車の事故で人を死傷させた場合と同じです。
このような事態にそなえるためには,車と同様,保険をしっかりかけておくしかありません。
 多くの自動車保険や学資保険,生命(傷害)保険などに,日常生活上の加害行為で賠償義務を負ったときに保険でカバーされる特約(日常生活賠償特約)が追加できます。保険料もそう高額ではありませんので,このような保険に入っておくことが必要でしょう。

 また,運悪く被害に遭った場合,加害者に賠償義務がない,あるいは賠償する資力がないと,治療費すら持ち出しになってしまいます。
(自動車事故の場合は自賠責保険で最低限の保障がありますが,自賠責がない場合は相手から支払いを受けるしかありません)
 このような場合に備える保険として,自動車保険には「人身傷害補償特約」というものがあります。最近は自動車に乗車中でなくても人身傷害補償が受けられる特約もあるようです。

 万一の際に相手に対してきちんと賠償ができるように,また万一の際に自分の身を守るために,保険にきちんと加入しておくことが,今回の最高裁判決を受けて私たちができることだと思います。
(半田)

異物混入事故に遭遇した場合の対処法2015年02月07日

最近、食品の中に異物が混入していた、というニュースが世間を騒がせています。
食品工場や飲食店では、普段から衛生管理を徹底し、製造過程において「人の健康を損なうおそれがあるもの」の混入がないよう注意する食品衛生法上の義務があります。
それをさておいても、商売上の常識として「食品に異物が混入してはいけない」ということは、ほぼ異論がないところでしょう。

しかし、どれだけ注意しても、製造過程から流通過程を経て消費者の手元に届くまでに異物が混入する可能性をゼロにはできないことも、最近の相次ぐニュースを見れば想像ができるところです。

では、消費者として、食品の異物混入に遭遇した場合、どう対応すべきでしょうか。
このような場合、まずは発見した異物と、混入元の食品(商品)の写真を撮り、異物が混入していたという証拠をはっきりと残すことが大切です。
また、当該商品は製造元に返却することになるため、混入していた異物も含めて処分せず、別々にチャック付きポリ袋などに入れて保管するべきでしょう。

包装袋や外箱にも、製造工場や製造時期を示す固有番号が印刷されていることがありますので、これらもすべて捨てずに保管しておいてください。
購入店のレシートがあれば、購入した証拠となりますので、それも保管しておくべきです。

そのうえで、メーカーの問い合わせ窓口(飲食店であれば店頭の店員)に対し、異物が混入していたことを告げて対応を求めることが最善です。
製造過程で異物が混入したならもちろん,そうでない場合でも,メーカーは通常品値管理に最大限の注意を払っていますので,このような連絡があれば,ほぼ全てのメーカーは適切に調査・対応を行うと考えられます。
もちろん,場合によっては不誠実な対応を取るメーカー等もありえますが,その場合でもまずはメーカーに連絡し,対応が不十分な場合には各種相談窓口(消費生活センターや保健所等)に対応が不誠実であることも併せて相談し,適切な対応を求めていくことが最善です。

近時の異物混入がニュースになっている事例では、メーカーにクレームをつけず、TwitterやFacebookなどのSNSに異物混入の話を書き込んだり、Youtubeやニコニコ動画といった動画サイトにアップすることもあるようですが、このような行為は場合によっては、事実であってもメーカーに対する名誉毀損ないし信用毀損行為となり得るため、避けた方が良いでしょう。

なお、このような異物混入によって健康被害が生じた場合、製造物責任法に基づきメーカーの責任を問うことができますが、「生命、身体、財産の損害」がない場合には製造物責任の問題となりません。このような場合には、不良品として製造者に返品・交換を求めることが法律上、取り得る最大限です。

冒頭述べた通り、どれだけ注意しても異物混入の可能性をゼロにはできない以上、製造者が原因を究明して対策を取るよう促し、再発を防止していくことが何より大切です。
そのためには、製造者側にこのような問題に対して謙虚に対応するよう求めていくこと、そして苦情が「不当なクレーム」になってしまい製造者が聞く耳を持たなくなるような行動ではなく、製造者にきちんと事実を伝えて改善を促すことが、消費者として取り得る最善の行為ではないでしょうか。

(本記事はニュースサイト「jijico」に投稿したものを一部加筆して掲載しています。元記事はhttp://jijico.mbp-japan.com/2015/01/16/articles14820.htmlです)

弁護士の「ワークライフバランス」とは2014年12月21日

近年,仕事一辺倒の生き方を見直し,「仕事と生活の調和」を意味する「ワークライフバランス」を実現すべき,という話を良く耳にします。

労働事件(労働者・使用者問わず)に携わっていると,ワークライフバランスの重要性は身にしみて理解できるのですが,
ふと我が身を振り返ってみると,「弁護士にとっての『ワークライフバランス』って何だろう」と思うようになりました。

以前,標準的な1日の仕事をコラムに書きましたが(或る弁護士の一日),これを見て「どこらへんがバランスやねん!」と思われる方も多いと思います。
確かに,始業終業の時間が曖昧で,人によっては深夜まで仕事をしているとか,土日に会議や出張が入るとか,仕事が立て込んでいたり緊急案件が入ると休み返上は当たり前で盆や正月もあってないようなものなど,ワークライフバランスの重要性については「むしろ自分が大丈夫か」と言われてしまう状態です。

けど,僕だけかもしれませんが,以外と弁護士って端から見ると働き過ぎに見えても,ワークライフバランスがおかしい(仕事をしすぎだと思っている),と思っている人は少ないような気がします。
その理由は人それぞれだと思いますが,弁護士の仕事は,生計を得る手段である「仕事」であり,かつ「生き方」だと捉えている弁護士が多いのかもしれません。
弁護士法1条(弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。)ではありませんが,単に仕事と考えていたら,利益にならない公益事件(環境問題,行政事件)や,人の命がかかっている死刑求刑の刑事事件や再審事件などをやる弁護士は居ないでしょう。
これは公益事件だけでなく,例えば企業法務等でも同様ではないでしょうか。激務の中,単に得られるフィーだけでモチベーションを維持できるとは思えないからです。

では,なぜこのような「仕事≒生き方」になるのか。それはやはり「自分で事件を受けるかどうかを決められる」こと,及び「自分の信念や人生観を事件処理に反映させることが出来る(反映させないといけない)」ということにあるのだと思います。
研究者(大学教員など)の先生方とお話をする機会も多いのですが,皆さん研究分野を(仕事とは思えないほど)熱く語られます。弁護士も同様に,関心のある分野を深めていくと,どんどん仕事という意識が薄れていき,仕事≒趣味になってくるような気がしています。

とはいえ,弁護士も激務の中,きちんと趣味や家庭を大事にされている方がほとんどです。
(佐賀にも弁護士の野球部やフットサル部,テニス部があります)
その意味では,弁護士は時間の使い方が上手いのかもしれませんね。

昨今,法曹養成の問題などから法曹志望者が減っており,弁護士の仕事に「魅力がなくなった」と言われることもあります。
確かに,収入を得る手段=仕事としての弁護士業は厳しくなっていると思いますが,生き方(自己実現)としての弁護士には,まだまだ魅力が失われていないと思います。

電話・メールでの相談を行っていない理由2014年10月16日

よくいただくお問い合わせとして,「電話(メール)での相談はできますか?」というお問い合わせがあります。
これについては,誠に申し訳ありませんが,原則として電話・メールでのご相談は行っておりません。
確かに,気軽にご相談いただくためには電話やメールが便利なのですが,以下の理由から責任を持ったご回答ができないため,お断りせざるを得ないのです。

1 電話(メール)では事実関係が十分把握できない
 法律相談においては,まず相談者の方のお悩みごと(何を弁護士に聞きたいか)を確認し,その上で法的なアドバイスをするために必要な情報をできるだけ多く伺う必要があります。
 たとえば離婚のご相談であれば,結婚してから離婚を決意するまでに何があったかをお聞きしないとアドバイスができませんし,相続であれば,家族関係や相続財産の内容,あるいは相続人間でこれまでどのような話があったかを把握する事が不可欠です。
 交通事故になるともっと複雑で,過失の判断であれば事故の現場の状況,信号の有無・表示,双方の車の動きなど,事故の客観的状況の情報が多数必要ですし,賠償範囲になると,怪我の内容や車の損傷状況など,資料や写真をみないとわからないことがほとんどです。
 このように,電話やメールでは複雑多岐にわたる状況を弁護士が正確に把握できず,事案に応じた適切なアドバイスをすることが難しいのです。

2 電話(メール)では時間に限りがある
当事務所での法律相談では,極めて簡易な相談を除いて,概ね45分~1時間程度の時間を使って事情を伺い,ご説明をさせていただいています。 逆に言うと,法律相談で事案に応じてわかりやすく回答するためには,どうしてもある程度まとまった時間が必要なのです。
そのため,法律相談の御依頼も原則として予約制とさせていただき,十分な時間を確保した上でゆっくりとご説明させていただいています。
電話での相談では,予めご予約を頂く性質のものではなく,他の業務の合間を縫っての対応となりますので,面談相談のようなまとまった時間を取ることができません。
また,メールはご相談事項についてやりとりのタイムラグがあるため,どうしてもスムーズな応答が困難になるという問題もあります。
当意即妙なご対応をさせて頂くためにも,面談相談をお願いしております。
3 電話・メールでは不十分な説明になる危険がある
 法律問題は得てして複雑な場合が多く,一度説明を聞いただけでは理解できないこともままあります。
 当事務所では,ご相談をお受けする際に,パソコンやホワイトボードなどを利用して,可能な限りわかりやすくご説明をするよう心がけておりますが,電話やメールではこのような説明が困難です。
 また,複雑な事案や,ご相談者でお手続きが必要な事案については,資料やメモをお渡しすることもありますが,これも面談でのご相談でないと困難です。
 もちろん,弁護士において事案の詳細を十分把握できない場合,相談のご回答が一般論の域にとどまったり,不正確なアドバイスとなる危険もあります。

4 例外的に電話・メールでのご相談をお受けする場合
 当事務所においてご相談者の側のご事情が予め把握できており,簡易なご相談で電話・メールでの対応が可能な場合には,例外的に電話・メールでのご対応も行っております。
 顧問契約を締結頂いている場合には,顧問先のご事情について当事務所でも十分把握できるため,電話等での相談でも上記問題が発生しません。(もちろん必要があれば来所又は訪問の上ご対応いたします)
 頻繁に弁護士に相談する必要がある場合,あるいは気軽に電話やメールで相談できる弁護士が必要な場合には,是非顧問契約をご検討ください。

小中学生向けイベント「サマースクール」のご報告2014年08月11日

小中学生向けイベント「サマースクール」のご報告の写真
佐賀県弁護士会には,市民向けに法的思考や裁判制度に関心を持ってもらうための啓発活動を行う「法教育委員会」というものがあります。
この委員会,活動は学校に出向いて出前授業を行ったり,市民向けのイベントを行っていますが,その中でも最大級のイベントが毎年夏休みの時期に行われる「サマースクール」です。

小学校4年生~中学校3年生を対象にして,刑事裁判の裁判劇を見てもらい,劇の内容について裁判員として判決を考えてもらうという内容で,佐賀地方裁判所・佐賀地方検察庁の協力の下,実際の法廷を使用し,本職の弁護士・検察官・裁判官が劇を演じるというものです。
4年前から行っているイベントですが,今年も去る8月7日に大盛況の内に行われましたので,ちょっとその模様をご報告したいと思います。

例年,サマースクールは小学生対象と中学生対象に分けて実施しています。
これは,同じ台本では中学生には理解できても小学生には難しすぎたり,小学生を対象とすると中学生には面白くなかったりということに配慮しています。
小学生向けには,童話をモチーフにしてコミカルな裁判劇を行い,中学生向けにはリアルな裁判劇で刑事裁判を忠実に再現しています。
今年は小学生の部では「3匹の子ぶた」を題材にした「子ぶたは正当防衛か?」という裁判劇を,中学生の部では実際の裁判例を題材にした,これもやはり正当防衛が問題となる裁判劇を行いました。
いずれも「正解」はなく,法律と証拠に従ってどのように判断するか,それをグループでどのように考えていくかというものです。参加者からは少し難しかった,という意見もありましたが,概ね好評に終わったと思います。

と,これだけでは単なるニュースなのですが,このサマースクール,実は台本から役者まで,全て佐賀県弁護士会法教育委員会のメンバー(+裁判官・検察官)で準備しています。
もはや「文化祭」のノリなのですが,やってるのは法律の専門家ばかりですので,細かい点に妙なこだわりが出ています。
例えば,写真は小学生の部の当日配付資料の表紙ですが,逆転裁判のイラストを使用するにあたり,著作権者のカプコンにきちんと許諾をとっています。例年お願いしていたら,今年は素材の提供まで頂いたので,格段のクォリティに仕上がっています。
もちろん台本も法律家が作成していますので,法律監修は当然ばっちりです。

しかし,これだけではありません。
本来本職ではないはずのデザイン・役者まで,なぜか妙なクォリティの高さがあります。
デザインは委員のK先生が毎年担当されていますが(今年の表紙も),弁護士にしておくのはもったいないくらいのスキルで,毎回外注したかのような納品がなされています。
役者も個性派揃いの弁護士会会員(特に毎年小学生の部に出演しているN先生)による「熱演(怪演?)」で,小学生部会では観客の爆笑を,中学生部会では劇とは思えないリアルな裁判を毎年実現しています。

例年応募多数で抽選になっていることもあり,希望された方全てにご参加頂けなかったのは申し訳なかったですが,サマースクールは多分来年もやると思います。
案内はいくつかの学校に個別にお願いして配付しています(今年もお願いした各学校には大変お世話になりました)が,広く参加OKですので,来年の夏休みの思い出にぜひいかがでしょうか?

(半田)

不当要求防止責任者講習の講師を務めてきました2014年08月06日

去る8月4日に実施された「不当要求防止責任者講習」の講師を務めてきました。

不当要求防止責任者講習とは,暴力団対策法に基づき,佐賀県暴力追放運動推進センターが実施している講習で,近時の暴力団情勢や,暴力団等からの不当要求への対応要領,被害防止ノウハウの講習です。
私も弁護士登録以来,民暴委員会(正式には民事介入暴力対策特別委員会)に所属し,暴力団追放運動のお手伝いをしており,今回も委員会からの派遣ということで,専門家講師として講演をさせて頂きました。

暴力団排除の大原則は「恐れない」「利用しない」「金を出さない」と言われています。
このうち暴力団を「利用しない」「金を出さない」というのは,暴力団を利用しても結局は「暴力団に利用される(カモにされる)だけ」であるということを,多少のフィクションを交えながらご説明しています。
また,突然押しかけてくる暴力団であっても,その手口を理解し,常日頃からの危機管理意識を持っていれば,毅然と対応できます。その意味で暴力団を「恐れない」ことの重要性もお話しできたかな,と思っています。

何より大事なのは,常日頃から組織のトップから現場に至るまで,暴力団排除の意識と危機管理意識を持ち続けること,そして実際に何かあった場合にはすぐに専門家に相談すること,ではないでしょうか。
1時間の講義でしたが,少しでも受講者の方に伝わっていればいいな,と思う次第です。

(半田)

刑事事件と裁判員裁判2014年07月11日

一定の重大事件について,裁判官と市民の方々が刑事裁判を行う「裁判員裁判」が導入されて早5年が経過しました。
最近は裁判員裁判を舞台にしたサスペンスドラマも作られるようになり,ある程度市民の方々にも広まったところではないかと思います。

とはいえ,一般の方にとって刑事裁判や裁判員裁判は身近なものではなく,イメージが持ちにくいのも確かです。
そこで今回は刑事裁判と裁判員裁判について,簡単にまとめてみたいと思います。

刑事事件というと,皆さんはどのようなイメージを持つでしょうか。
「警察24時」みたいなドキュメント番組を思い浮かべる方も多いと思います。
多くの場合,「犯罪発生!」となると警察が捜査を行い,被疑者(罪を犯したと疑われる人。犯人とは限りません)を発見して逮捕するところから始まります。
(身元がはっきりしている場合や交通事故などでは逮捕せずに捜査を進めることもあります)

逮捕されると,48時間以内に検察庁へ身柄と記録が送られ(よく「書類送検」と言われます),検察官による簡単な取調べ(弁解録取手続といいます)を経て,さらに24時間以内(逮捕から72時間以内)に,引き続き身柄拘束を必要とするかどうか(「勾留」といいます)についての裁判所の判断を受けることになります。
ここで勾留の必要性があると判断された場合,最長20日間,拘置所(または警察署)に勾留されます。その間に必要な捜査が行われることになります。


弁護士はこのように罪を犯したと疑われる人の権利擁護(防御権)のために専門家として助力するものであり,その地位は憲法にも明記されています。
刑事事件の弁護というと,「クロをシロにする」ようなイメージがありますが,実際は大きく異なります。
えん罪の疑いがあれば疑いを晴らすことはもちろんですが,大多数の「被疑者が罪を犯したことが間違いない事件」においても,例えば被害者への弁償の手続をしたり,家族や勤務先などにお願いして釈放後の環境を整えたり,あるいは被疑者とじっくりと話をして「今後事件を起こさないためにどうすればいいか」を一緒に考えることもあります。
英語では刑事弁護人を「ディフェンダー」と呼んでいますが,これが最も正確に刑事弁護人の仕事を表しているのではないでしょうか。
なお,一定の軽微な犯罪を除いて,勾留がされた時点で資力のない被疑者には国選弁護人が付されます。我々弁護士は多くの場合,この時点から刑事手続きに関与することになります。
ただ,前述のとおり勾留前にも捜査や事情聴取が行われており,この時点から弁護士が関わることが望ましいと思います。
この点については勾留前に国選弁護人を付すことができるように拡大すべきではないか,現在議論が進んでいます。

捜査の結果,検察官において裁判をする必要があると判断した場合は「起訴」という手続きが取られます。それ以外にも,あえて裁判を受ける必要がない,あるいは犯罪の嫌疑がない等の理由で処分されず釈放となる場合や,簡易な裁判手続きで罰金の処分にする略式起訴という手続もあります。
 どの手続を取るかの判断は,捜査側である検察官の判断に委ねられています(起訴弁護主義)。


 裁判になった場合,検察官が請求する証拠によって,被告人(罪を犯したと疑われて起訴されている人)が犯人であるとの証明がなされなければ有罪とできません(無罪推定の原則)。被疑者・被告人が罪を認めている場合でも同様です。
多くの場合,被疑者が逮捕された時点で犯人であるとのイメージを持ちますが,実際に犯人かどうかは判決までは分からない,ということになります。

裁判員裁判では,上述の「証拠により被告人を犯人と認めることができるか(有罪無罪の判断)」のほか,「被告人が犯人の場合,どのような刑を科すか(量刑)」の判断も行います。

裁判手続は裁判員裁判以外の場合,平均して起訴から2ヶ月程度で第1回公判が開かれ,事実関係に争いがない場合には即日結審して1~2週間後に判決が言い渡されます。
即日結審できない場合,2週間~1ヶ月程度の間隔をおいて審理を行い,証拠調べの手続を行うことが多いです。
これが裁判員裁判になると,裁判員の負担を考慮して,手続を連日(長期にわたる場合には間隔が開く場合もあります)行います。
審理期間は事実関係に争いがなく,証人が数名の場合は3~4日が多いですが,事実関係に争いがあり,多数の証人を調べる必要がある場合にはかなりの期間がかかることもあります。
いずれにせよ,手続を連日集中して進めるため,事前に検察側・弁護側の主張を整理し,証拠の採否を定めておく必要があります。
そのために「公判前整理手続」というものが行われます。
公判前整理手続,及び裁判員の選定のために裁判員裁判では起訴から公判まである程度の期間がかかります(争いのない事件で6ヶ月程度)。事件が起こってからしばらくして裁判となっているのはそのためです。

手続の中身は裁判員裁判もそれ以外の裁判も大きく変わりません。
ただし,裁判員裁判は法律の専門家ではない市民の方々が参加するため,裁判所はもちろん,検察側・弁護側ともわかりやすい主張・立証を心がけています。
反面,わかりやすさを追求すると不正確になってしまうので,わかりやすさと正確かつ説得力のある主張立証の両立が,常に課題になっていると思います。
ちなみに半田はこれまで裁判員裁判を6件担当していますが,いつも「わかりやすく充実した主張立証」をするための工夫で苦労しています。

以上は本当に概略であり,詳しく説明するときりがないのですが,少しは刑事事件の手続がどう進められているか,イメージは持てましたでしょうか。
もし興味があれば,実際の刑事裁判の傍聴に行ってみてください。実際に行われている「リアルな」裁判を傍聴すると,これまでニュースでしか知らなかった刑事手続きの世界がよく分かると思います。

(半田)

日弁連法務研究財団 九州地区研修に参加しました2014年06月16日

去る6月14日に宮崎市で開催された,(公財)日弁連法務研究財団主催の研修会に参加しました。

日弁連法務研究財団は法実務の研修・法及び司法制度の研究・法情報の収集と提供を目的として設立された財団で,その活動の一環として研究者・実務家による研修会を各地で開催しています。
九州でも昨年に引き続き開催ということで,九弁連の研修委員会事務局を拝命していることもあり,宮崎まで足を伸ばして研修を受けてきました。

研修は財団の理事長でもある高橋宏志教授(民訴法)による学術的なものと,加藤新太郎裁判官による,裁判官から見たあるべき代理人活動についての二本立て。
高橋教授の講義は,大学院以来久々のアカデミックな内容で,久しぶりに「研究」の薫りを感じることができました。
また,加藤判事の講演は,「なるほど」と思う実例や身につまされる実例がいくつもあり,これまた参考になりました。

高橋教授の講演をまとめる程の力量はないのでこちらは割愛しますが,加藤判事の講演で印象に残った話を列挙しておきます。これは弁護士はもちろん,一般的にも参考になるのではないでしょうか。
 ・ 事件を取り扱うに当たり,代理人自身による裏付け調査を行うことが重要
 ・ 書面は期限を守ること。期限内に出ないと主張がない(反論できない)との印象を持ってしまう。
 ・ 期限に間に合わないときには電話でもFAXでもいいから連絡を。連絡がないと書面が出ない前提で考えてしまう。
 ・ 請求をふくらませるのもほどほどに。過大すぎると全体の信憑性を失う。
 ・ 事件全体を一言で説明できるくらい事件を理解しておくことが望ましい。
 ・ 事実の主張は具体的にメリハリをつけて,相手にイメージを伝えられるように。総花的な主張は重要な部分を伝えられなくなるリスクがある。
などなど。

財団の研修はトップクラスの研究者・実務家の講演を聴くことができる,地方の弁護士にとっては数少ない機会です。
日々めまぐるしく変化する社会情勢や随時改正される法律・更新される判例に対応するために,日々是精進で頑張らないといけませんね。

(半田)

司法修習生が修習に来ています。2014年02月26日

2月3日より,当事務所に佐賀地方裁判所で司法修習を行っている第67期司法修習生が研修に来ています。
司法修習生とは,「司法試験に合格し,最高裁判所の司法研修所に所属して弁護士・検察官・裁判官になるために実際の現場で研修を受けている」者です。
彼らは1年間の修習を経て,研修所の修了試験(司法試験に続く2回目の試験ということで,通称「2回試験」と言われています)に合格し,晴れて法律実務家への道をあゆみ出すことになります。
 佐賀で修習を受ける修習生は,司法修習生は1年間の修習期間中,裁判所(刑事・民事),検察庁,弁護士事務所で各2ヶ月ずつ研修を行い,その後選択型修習として,弁護士事務所に机を置きつつ,自身が希望する場所での研修を行います(地域によっては後述の集合修習がの後に選択型修習がある地域もあります)。
 その後,埼玉県和光市にある司法研修所に集められ,最後の仕上げの教育を受けた後,試験に臨むことになります。

 佐賀では弁護士経験が5年以上の事務所に修習生を配属することとされており,当事務所(半田)は今年はじめて修習生を受け入れています。
 自分自身,ちょっと前に司法修習を受けていた(大分での修習でした)ような状態ですので,何を指導して良いか試行錯誤ながら,自分が頂いた指導を思い出しながら,色々と勉強をしてもらっている状態です。
 当事務所で研修をしている修習生は,2月~3月と8月~9月に当事務所に配属されていることになります。
その間は法律相談や訴訟の期日など,ほとんどの場面で修習生が同行していると思います。当事務所にお越しになる皆様も,司法修習生が立派な法律家になれるよう暖かく見守って頂ければ幸いです。


 なお,司法修習生については,以前は給料が支払われていましたが,現在は無給で修習を受け,その際の生活費等で必要な資金があれば,貸付け(貸与)を受けるということになってしまいました。
 私の時はまだ給料を頂いており,そこから生活費や文献などの費用を賄うことができていましたが,今はずいぶんと厳しくなっているようです。
 司法修習生には修習専念義務があり,アルバイト等も原則禁止されていることや,何より今後社会のお役に立っていくためにも,研修に専念できる経済的余裕を保証すべきところであり,日弁連や法律家有志がそのための運動を行っています。
 この点についても皆様のご理解とご協力を賜れれば幸いです。


日弁連の意見など

ビギナーズネット

(半田)

弁護士に「専門分野」はありますか?2014年01月25日

当事務所でご相談者からいただくお問い合わせで多い内容として,「専門分野はありますか?」,または「○○はご専門ですか?」というものがあります。

お答えとしては「それだけを取り扱うという意味での専門はありませんが,重点的に取り扱う分野はあります」ということになります。

皆さんに身近な専門家といえば「お医者さん」がありますが,医師の世界では「内科」「外科」のように取り扱い分野が分かれているため,弁護士も同様のイメージがあるのかもしれません。
しかし,多くの弁護士は医師のような分野別の分化はすすんでおらず,市民レベルでの法律問題を中心に,一定の特殊分野を除いて,日常問題となるほぼすべての法律分野を取り扱っていることがほとんどです。
したがって,多くの弁護士にとっては,「その類型の事件のみを取り扱う」という意味での「専門分野」というものはないと思います
逆に,日常ご相談を受ける機会がない専門的な特許紛争や外国取引などは,そのジャンルを中心に取り扱う大都市部の専門事務所があり,この部分は「その分野のみを取り扱う」弁護士はいるはずです。

とはいえ,弁護士はそれぞれの事務所の方針や顧問先の種類,各弁護士の興味・関心によって,ある程度の経験を経てくると,結果的に「一定の事件を比較的多く取り扱う」ようになってきます。
その意味では「よく取り扱う事件」という点での「専門分野」はあるのです(紛らわしいので「重点取り扱い分野」といいます)。
それでは,弁護士の「重点取り扱い分野」とはどうなるのでしょうか。
基本的にはそれぞれの弁護士の業務方針や経験によると思いますが,たとえば女性弁護士であれば,公的機関での女性による法律相談を通じて,女性特有の法律問題(離婚など)を取り扱う機会が多いようです。
そのほかにも,自治体の顧問であれば行政事件の行政側,労働組合や労働団体と接点があれば労働事件の労働者側の事件を取り扱う機会が多くなるなど,顧問先や接点のある団体によって「重点取り扱い分野」が出てくることもあるようです。
ただ,このような事務所や弁護士であっても,重点分野以外の案件が苦手ということはないでしょう。特に佐賀のような地方都市であれば,一般的な相談はほぼすべての弁護士が対応できると思います。
ちなみに,医師も国家試験は内科も外科も同じ医師免許試験ですので,スキルを身につけるに従って重点分野が出てくるという点では似ているのかもしれません。

それでは,当事務所の重点取り扱い分野は,というご質問に対しては,現在のところ「交通事故」「医療事故」「労働事件」「破産(個人・法人)」「刑事・少年事件」となっています。
私は数年来,ある大手損保の交通事故を重点的に取り扱わせていただいており,交通事故事件の受任数も年平均で60件程度となっています。
また,加害者側で損保会社と協議しながら事件処理を進める過程で,保険実務の内容や後遺症に関する整形外科の知識(これは医療事故事件を通じて得た知識も含みます),自動車の構造等(若干趣味の延長線上でもあるのですが)などを学ぶ機会もあります。
医療事故・労働事件については,主に市民側で対応している諸団体(医療問題研究会・労働弁護団など)に所属し,事例検討会に参加するなどして研鑽を積んでおり,比較的多くの事件を取り扱うようにもなっています。
破産や刑事事件も,佐賀のような地方都市では,早い段階から多数の破産管財事件や国選弁護事件を多数経験することができ,また私自身の関心があることもあって,現在も数多くの事件を取り扱っています。
もちろん,離婚・相続や不動産トラブル,消費者トラブルなど,日常問題となる法的トラブルについては,これまで多数の事件を取り扱っておりますので,こちらもご安心してご相談いただければと思います。
(半田)

2014年 あけましておめでとうございます。2014年01月01日

皆様、新年明けましておめでとうございます。

昨年は秘密保護法や憲法改正論議など、国政レベルでの諸問題・議論があり、九州でも玄海原発差し止め訴訟や諫早干拓の開門期限切れ問題など、大きな法的問題があった年でした。
当事務所もこれらの問題については本年も引き続き取り組んでいく所存です。

私が取り扱っている事件でも、佐賀での秘密交通権侵害を巡る国賠訴訟で原告一部勝訴の福岡高裁判決が確定し一定の成果が出た一方、
接見室での写真撮影をめぐる接見国賠訴訟を新たに提訴することになるなど、この問題では引き続き対応が必要になっています。
その他にも、B型肝炎訴訟のさらなる掘り起こし・運動拡大や各種弁護団事件などはもちろん、昨年と同様交通事故紛争と倒産処理事件についてさらなるスキルアップを目指して日々研鑽を重ねる所存です。

当事務所も今年4月で5周年を迎えます。
12月からは新たに大坪孝聡弁護士が加入し、より一層の法的サービスの充実に向けての準備を進めております。
本年もこれまで同様、「1件1件に全力投球」でがんばって行きたいと思いますので、引き続きご指導ご鞭撻を賜わりますようお願い申し上げます。

(半田)

「エンディングノート」を書いてみませんか?2013年12月14日

先日,地元・小城市の市民団体主催の学習会で「エンディングノート」についてお話をする機会をいただきました。

これまで相続というと「遺言」の話が中心でしたが,遺言は法的な効力があるが故に,法的に有効な遺言を作るためには記載内容や手続きが厳格であり,中々に敷居が高いということもありました。
 エンディングノートも遺言と同じく故人の意思を残すものえはありますが,遺言と異なり法的な有効性を問題としないので気軽に作成できることもあり,最近脚光を浴びているようです。
 エンディングノートに記載されるものとしては,具体的には遺言とも重なる「遺産」はもちろん,家族へのメッセージ(自分への弔辞を書く方もおられるようです)や葬儀・埋葬の方法や形見分け,万一の際に連絡してほしい相手などを書くのが多いようです。
 最近は有料・無料を問わず書式も多く出されており,自分の考えに応じて色々と書き遺すこともできるようになっています。

 とはいえ,法的拘束力はないので,エンディングノートも万能ではありません。
また,遺言には相続や身分関係以外のことを記載してもかまわないので,遺言を作れるのであればそれに越したことはないとも思います。
 その意味で,以下のケースでは遺言を作るべきではないでしょうか。
(遺言を作るべき場合)
 ・ 相続財産を特定の人に相続させたい場合
 ・ 遺贈を行う(法定相続権のない人へ遺産を渡す)場合
 ・ 相続紛争が発生する可能性が高い場合
 ・ 身分行為(死後認知等)を行う場合
 逆に,相続紛争が起こる可能性が低い場合や,相続・身分関係についての遺言は考えていないが,葬儀方法や訃報の連絡先は遺したい場合などは,まずはエンディングノートから作ってみることもいいと思います。
 ただし,相続紛争は遺産の多寡にかかわらず発生しますので(むしろ遺産額が少ない場合や,不動産など処分が困難な遺産が多い場合ほどもめる印象があります),「うちは相続財産がないから大丈夫」というのはご注意ください。
 また,以前にも書きましたが,遺産の内容を相続人が把握していないことに伴う「遺産を使い込んだ云々」の紛争もありえますので,エンディングノートには必ず相続財産の内容は書かれた方がよろしいかと思います。
 個人的には,遺品の形見分けや訃報の連絡先も遺されているといいかな,とも思います。
 遺言の下書きの意味も込めて「まずはエンディングノートを作ってみよう」というのもいいのかもしれません。

 法律家としては,相続紛争を多く目にしているものですから,可能ならば法的に有効な遺言を遺しておくべきとも思います。
 他方で,相続紛争において故人の遺志の理解に食い違いがあり(おおむね全員が自分に都合よく解釈します)紛争が激化することも多く,故人の気持ちがはっきり遺されていればこんな紛争にはならなかったのではないか,と思うこともあります。自分の気持ちをきちんと遺すということからは,エンディングノートも一つの有効なツールなのかな,と思っています。
 私は相続は財産だけではなく,故人のこれまでの人生や気持ちの一部を引き継ぐことだと思っています。そうれあれば,引き継ぐべき「気持ち」をエンディングノートという形で遺すことにも意味はあるのではないでしょうか。
 何より,自分に万一のことがあった場合のことを考えることは,これまでの人生を振り返り,親しい方々への感謝の気持ちを再確認することにもつながるのではないでしょうか。

 皆さんもお正月や誕生日など,節目にエンディングノートを書いてみませんか。

第56回人権擁護大会in広島2013年10月08日

第56回人権擁護大会in広島の写真
10月5日・6日に広島で行われた第56回日本弁護士連合会人権擁護大会(人権大会)に参加しました。

人権大会とは,日弁連が毎年1回開催している大会で,「基本的人権の尊重と社会正義の実現」(弁護士法1条)を職責とする弁護士の活動において,これまでの日弁連の人権活動を報告するとともに,その時々の人権問題についてシンポジウムを行い,決議を出すというものです。
今年は「非核都市・ヒロシマ」にふさわしく,「原発問題」「国防軍」という重めのテーマ,それに重大な社会問題である「格差社会の是正」という3つのテーマに分けてシンポジウムが開かれました。
私は「原発」のシンポに参加しましたが,正午から午後7時までみっちりと組まれたスケジュールの中,福島の現状や内部被曝の問題など,密度の濃いシンポジウムが繰り広げられていました。

翌日は前日のシンポジウムを受けての大会。
3つの決議案+憲法改正要件の緩和に反対する決議案がいずれも討議され,採択されています。

と,まじめな話はここまでにして,人権大会というと各地の趣向を凝らした懇親会や観光も魅力です(これくらいの息抜きはお許しくださいね)
広島も,メインはA5等級の広島牛を2頭分準備したとのこと。そのほかにも広島風お好み焼きや尾道ラーメン,あなご飯など,ご当地の名物料理が並ぶ懇親会も満足でした。

昨年は佐賀県で実施し運営に東奔西走したこともあり,開催地のご苦労が分かるだけに,大会が盛況に終わったことは参加者としてもうれしく思います。
来年は「函館」で実施されるとのこと。こちらも参加するのが今から楽しみです。
(写真は大会の様子)

九州労働弁護団 夏期合宿in宮崎2013年08月02日

先日宮崎市内で行われた「九州労働弁護団」の夏期合宿に参加しました。

九州労働弁護団とは,特定の政党や労働団体と組織上・財政上の連携関係をもつことなく,広く全ての労働者・労働組合の権利擁護のための活動を行っている弁護団で,九州エリアの弁護士で構成されています。
年に2回の学習会を実施しており,日々変化する労働問題の情勢について,理論面・実務面からの検討が行われています。

今回の夏期合宿では九州大学大学院法学研究院の山下昇准教授を講師にお招きして,最新の労働事件判例の講演を頂くと共に,実際に弁護団メンバーが手がけている事件の報告・討論を通じた研究会がありました。
具体的な事件の内容をご紹介することは難しいのですが,いずれの事件も基本的な労働法規(一部は憲法にも!)に照らして問題があると思われるものであり,現実の労働の現場における労働関連法規の形骸化は深刻なものであると痛感します。

事件報告で上がってくる事件,あるいは弁護士に依頼される事件はほんのわずかであり,実際には大小多くの労働問題が発生していることは明白です。
労働者の権利擁護の観点からはもちろん,使用者側にとっても労働事件の発生は企業イメージの低下や職場の混乱など,大きなデメリットはあるはずです。
その意味では,使用者側にも労働法規を遵守し,労働事件を未然に防止することのメリットはあるはずですが,紛争になるケースは往々にして,使用者側が労働者側の不満を力で押さえつけようとした結果にあるような気がしてなりません。

労働者が違法・不当な取扱に対して声を上げる事はもちろん,使用者側もむやみに対立姿勢を取るのではなく(もちろん不当要求は別ですが),予防法務的な対応ができないものか,と事案をみるにつけ思うことしきりです。
(なお,当事務所では労働者側・使用者側双方からの労働事件のご相談を受け付けています。予防的なご相談にも対応しますので,お気軽にお問い合わせください。)

人吉農芸学院 見学レポート2013年07月23日

人吉農芸学院 見学レポートの写真
先日,佐賀県弁護士会の「子どもの権利委員会」で熊本県の人吉農芸学院の見学に行ってきました。
子どもの権利委員会では,昨年より付添人活動の研修をかねて各地の少年院を見学していますが,今回もその一環での研修です

人吉農芸学院は矯正施設である「少年院」の1つで,主に1年程度のカリキュラムを行う施設です。
人吉ICから車で15分程度の山間部にあり,川辺川のそばののどかな風景の中にあります。
元々は海軍航空隊の施設だったとのことで,広大な敷地の中でその名のごとく農業・農芸のカリキュラムや,各種建機の運転・溶接など,社会復帰後すぐに役立つ技能の習得を意識したカリキュラムがもうけられているとのこと。
特に,大型特殊免許(いわゆる「大特」)の免許が取れるのは全国の少年院でも人吉以外は2カ所しかなく(施設内に試験場コースもありました),カリキュラムとしても珍しい内容です。
(詳細はhttp://www.moj.go.jp/content/000024157.pdfをご参照ください。)

もちろん矯正施設ですので,厳重な管理と厳しい指導があることは間違いありませんが,
敷地の広さもあってか,イメージしているよりは開放的な印象を受けました。
(なお,昨年施設を新築していますが,それ以前は外部とを隔てる「柵」がなかったとのこと。賛否はあるでしょうが,個人的には少年院は人吉や昨年見学した佐世保のような比較的開放的な雰囲気のほうが望ましいとは思います)


縁あって少年事件を担当することも多く,担当した少年の中には少年院送致となった少年も一定数いるのですが,
個人的には少年院は必ずしもマイナスではなく(もちろん,行かなくていいならそれに越したことはありませんが),少年院に行かなければならないのなら,その時間を無駄にするのではなく少年院で技能や社会生活のルールをきちんと学んで更正への一歩を踏み出してほしいと思いながら日々少年と接しています。
少年院を見学することで,弁護士も少年院のカリキュラムや指導内容をきちんと理解し,付添人をつとめる際にやむなく少年院に送り出さなければならない少年にとって,その時間が無駄にならないようアドバイスするための材料にできればいいな,と思っています。
(写真は人吉農芸学院の正門。施設管理の都合上,中の写真はありません)

安全運転管理者講習の講義を行いました。2013年07月20日

平成25年度安全運転管理者法定講習で,「交通事故と賠償」の講義を担当させていただきました(年20カ所のうちの1カ所ですが)

安全運転管理者制度は、自家用自動車を使用する事業所等における交通事故を防止するために設けられた制度で,一定の要件を満たす事業所において選任する必要があるものです。
昨年よりこの講習のうち「交通事故と賠償」については佐賀県弁護士会より講師を派遣しており,そのうちの一コマを担当させていただいております。

講義ではテキストに沿いつつ,弁護士の仕事から見た交通事故の諸問題についてお話をさせていただきましたが,以下少しだけ抜粋してご紹介します。

1 交通事故による責任としては,刑事罰・民事賠償・行政処分という法的責任のほか,事故を起こしたことによる社会的責任(信用低下など)がある。事業主体にとってはこの社会的責任の低下ということは重大な損害になりうる。だからこそ,事業主体としても交通事故を予防し,不幸にも事故が発生した場合にきちんとした対応をとる必要がある。

2 事故を起こした場合に逃げてしまうと,後々逮捕される可能性が非常に高い(逮捕の要件として「逃亡」「証拠隠滅」防止があるため)。そのため,事故が起こった場合は必ず警察に申告すべきである。また,きちんと警察に申告して現場検証を行うことは,後々事故状況(過失割合)で争いが生じた場合の重要な証拠にもなる。

3 民事賠償で大きく問題になるのは,事故状況がどうであったか(過失割合)というもの。裁判になっても水掛け論になることが多いので,ドライブレコーダーは強い味方になる。

4 事業者は従業員の就業中の事故について使用者責任を負うが,それは勤務時間内に限らない。通勤中の事故も使用者責任を負うし,社用車を従業員のプライベートで使わせていれば,休日の事故でも民事責任を負うこともある。社用車の管理と従業員への指導は重要。

5 通勤や業務で原付バイクや250cc以下のバイクを使っている場合,自賠責保険が切れた状態で運転していないか注意。

6 民事賠償は,死亡の場合は賠償額が数億を超える場合もある。物損でも積み荷や休業損害が出た場合,1000万円以上の損害が出る可能性もある。自賠責は物損については支払われず,人損(死亡・ケガ)についても死亡3000万円,ケガ120万円+後遺症に応じた金額しか支払われないため,自賠責保険だけでは発生した損害を賄うことはほぼ不可能。そのため,任意保険が重要となるが,かかってない場合や賠償上限が不足することもある。リスクと費用を考えて可能な範囲で最大の保障をかけるべき。なお,任意保険には「弁護士費用特約」もあるので,これも活用を。

7 示談交渉がうまくいかない場合,交通事故紛争処理センターなどのあっせん,あるいは訴訟や調停という裁判所での手続きになる。各制度には一長一短があるが,話し合いができる余地があるかどうかで手続きを考える事が多い

8 事故が起きた場合,被害者・加害者ともに取り返しのつかない損害がでる。事故では誰も得をしないので,事故が起きないのが一番。そのためにも,事故で生じる責任をきちんと理解し,万一事故が起きたらどうなるかを意識して無理のない運転を心がけるべき。また,不幸にして事故が起きた場合にも,責任をきちんと理解して賠償に臨む必要がある。

9 交通事故に被害者・加害者双方の代理人として関わった経験から,交通事故でこじれるケースは初期の対応のまずさにあると思う。賠償や責任と謝罪は別問題として,事故が起きたら「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」と謝ることからはじめてはどうか。また,不幸にして重大事故の加害者になった場合,被害者(関係者)からはどれだけ罵られても当然である。これを恐れて謝罪に行かないと関係を悪化させてしまうので,「罵られに行く」という覚悟を決めて謝罪に行く必要がある。
  会社の責任者が同行する場合もあるが,この場合に責任者が事故状況をきちんと把握していなかったり,説明が二転三転すると被害者感情は悪化する。謝罪に急ぐことは必要だが,状況把握と対応の基本方針をきちんと固めて行くことが望ましい。


という趣旨のお話をさせていただきました。
交通事故は日常起きる法律問題ですが,その解決には専門性が要求される分野です。
不幸にも事故が起こってしまったときのために,賠償責任の内容や対応の仕方を普段から意識することは重要です。そのうえでわからないことがあれば,専門家(弁護士)にご相談いただくのが一番なのかもしれません。

九州国際重粒子線がん治療センター(サガハイマット)レポート2013年06月30日

九州国際重粒子線がん治療センター(サガハイマット)レポートの写真
B型肝炎訴訟佐賀弁護団で,九州国際重粒子線がん治療センター(サガハイマット)の見学にいってきました。

B型肝炎では,肝がんを発症されている患者さんも何人かおられますが,皆さん一様に将来の治療負担への不安を訴えられています。
そんな中,地元・鳥栖に肝がんにも適用がある重粒子線治療施設ができたこともあり,後学のために見学をお願いしたところ,ご快諾頂きお邪魔させていただいた次第です。

重粒子線治療は,シンクロトロン(加速器)を用いて光速の70%まで加速させた炭素(C)イオンを患部に照射することで,ガン細胞のDNAを破壊し退治する,というものです。
放射線治療の一種ですが,重粒子線の特徴として,一定の距離(深度)まではエネルギーを放出せず,ある一定の地点で全エネルギーを放出して,そこから先には貫通しないという特性があり,エネルギー放出地点を患部に合わせることで,正常組織へのダメージを限り無く少なくしてがん細胞に集中的にダメージを与えることができる,とのことです。
同様の治療法に水素原子イオンを用いた「陽子線治療」(九州では指宿メディポリスが実施)がありますが,重粒子線はそれよりも質量が大きいため,攻撃力も陽子線の2~3倍(但し加速するのに相応の設備とエネルギーを要する)という特徴があるのです。

詳細は書く余裕がありませんが,治療期間は肝がんなら2日~4日(ほか準備に2週間程度)と極めて短く入院の必要もない,患部の切除を行わないので身体のダメージが少ない,正常部位を避けてピンポイントで(照射付加部位の5mm程度まで寄れるそうです)照射ができる,従前難治性と言われた骨や骨軟部組織のガンに有効であるなど,可能性が広がる治療法です。

ちなみに,重粒子線は一定の速度で打ち出されるので,狙った場所にあてるために各種機具(照射範囲を拡大する機械や,抵抗をかけて到達距離を調整する機械など)を用いており,患者のガンの形に合わせた機具を作って治療を行うという,まさにオーダーメイドの世界でした。
粒子線治療は,既に放射線医学研究所などで治験実績もあり,今後保険適用の拡大を目指していくそうですが,特に「子どもの骨のがん」には粒子線治療以外の有効な治療方法がなく,これだけでも早く保険適用になってほしい,というセンター長のお話が印象的でした。
なお,胃がんや大腸がんなどの不規則に動くガンや転移性のリンパ節ガンなど全身性のガンには適用はなく,重粒子線といえども万能ではないとのこと。また,早期治療のほうがより効果的だということもあるようです。

地元に画期的な医療施設ができたことを喜ぶと共に,今後の保険適用も含めた診療範囲の拡大を期待するばかりです。

写真はハイマットの治療室。落ち着いた配色の空間で,医療施設とは思えない雰囲気でした。
最後になりますが,ハイマットの十時理事長,工藤センター長,北村専務理事には見学をご快諾いただいただけでなく,施設のご案内までしていただきました。この場を借りて御礼申し上げます。
また,当日素人のよく分からない質問にも快くご対応いただいたスタッフの皆様,ありがとうございました。

「段取り」って大事ですよね2013年03月06日

法律相談で多く見かけるケースとして「対処すべき事項のどこから手をつけていいか分からなくなり、全てに対応できなくなっている」方がおられます(特に借金問題)
この場合、①「対応しなければならないことが何かをまず整理する」
②「整理した事項について優先順位をつけて処理する」
(たとえば借金問題の場合,ヤミ金や取り立てが厳しいところから対応する,債務の全体像と生活の収支を把握する,そのうえで落ち着いた後に今後の方向を検討する)
ことをアドバイスすることを心がけています。

この場合の優先順位については,いろいろなパターンがあるのですが
多くの場合,「発生する危険が重大で切迫しているものから」
「締め切りが近いものから」
「手をつけやすいもの,簡単なものから(精神的負担の軽減のため)」
という順番が多くあります。(気乗りがしない事項を先に処理することで,劇的に改善することもあるのですが)

これは借金問題に限らず、他の案件でも同様です。
離婚であればDVがあればまず身を隠す、その上でまず離婚するかしないかを決断するということになりますし、
相続であれば特定の遺産の分配に固執せず、相続財産全体を見渡して解決へのグランドデザインを決めて行くことが結果としてスムーズな解決につながると考えています。
他の事件でも、前提問題の整理と証拠の確保から入って、次はどこに行って何をするかを順序立てて考えれば、
当初混乱されている相談者・依頼者もしだいに落ち着きを取り戻し、肩の荷が下りたような表情になられる方がほとんどです。
どこから手をつけていいかわからない状況こそが人を不安にさせるのでしょう。

と、ここまで書いてきて気づきましたが、この理は締め切りに追われる我々の仕事にも当てはまるんですよね。
何事にも優先順位をきちんと決めておくことが重要なのは,どの場面でも同じと言うことなのでしょう。
もちろん、当初の考えにに固執して柔軟性を失うことは論外なのですが。

法律相談のポイント2013年02月02日

当事務所に寄せられるお電話でよくお問い合わせ頂く内容として、
「○○という事案について依頼を受けてもらえますか」「××について依頼した場合の費用は幾らですか」というものがあります。

確かに、弁護士に依頼したくて法律事務所を訪ねる訳ですので、依頼を受けないのが判っていれば相談に行かないのは当然ですし、
依頼をするにあたって、弁護士費用がどれくらいかかるのか、ということもご心配だと思います。

しかしながら、同じ人間が世の中にいないように、事件も依頼者によって様々です。
例えば、交通事故であれば、過失割合が争点となるのかどうか、お怪我や後遺症があるかどうか、相手方が任意保険に加入しているのかどうか等々、ケースによって対応や難易度はそれぞれです。
離婚事件でも、依頼者が夫か妻か、子供はいるのかどうか、離婚原因は何か、など、事案の要素をあげていけばキリがありません。
そのほかの事件でも、相手方の対応やこれまでの交渉経過、証拠の有無・内容など、具体的にお話を聴かないと見通しが判断できないことがほとんどです。

また、既に相手から相談を受けている場合や、事件に何らかの関わりがある等で、ご依頼を受けられない場合もあります。
ご依頼を受けられるかどうかは、相談を受けてみてはじめてわかる場合も多いのです。

そのため、当事務所も含めて、多くの弁護士事務所では「まずは法律相談を受けていただき、相談でお聴きした事情をもとに見通しや費用をご提案する」ことが原則になります。
その意味で、法律相談は病院での診察や、車の整備における点検と考えていただけるとわかりやすいかもしれません。
お医者さんも患者さんの話を聞いて検査しないと診断や薬の処方はできないですし、
車の修理も、まずは車を工場に預けてチェックしてもらって、不具合がある部分を修理しますよね。
弁護士にとっての法律相談も同じです。

とはいえ、弁護士に相談したことはないし、30分刻みで費用がかかるのも不安、という方もおられると思います。
私もご相談に見えられた方で、時間を意識したのか、直ぐに答えを出してほしいというご希望があったり
なにを相談していいかどうかわからず、黙ってしまった方がおられたり、という経験があります。
弁護士も相談者の方が緊張することなく、心配事をすべてご相談できるよう配慮しておりますが、それでもどう話していいか…というご心配をお持ちの方に、法律相談のコツをご紹介したいとおもいます。

1 今なににお困りか、どのような解決を希望するかを弁護士に伝える
病気で医者の診察を受ける場合、「どんな症状があるか」をお医者さんに伝えますよね。
弁護士にも同様に、今なにで困っているかを伝えていただけるとアドバイスを考える上で非常に助かります。

2 事実経過を予め整理する。
法律判断の前提として、どのような事実があったかを正確に把握することが重要です。
事実を一番よく知るのは相談者ご本人ですが、いきなり弁護士から事実関係を聞かれても
どう説明していいかわからないことがほとんどだとおもいます。
説明が混乱すると、弁護士も事実関係の把握ができませんし、相談時間もかかってしまいます。
これを防ぐには、予め「何があったかを時系列にそって整理していただく」ことが重要です。

3 できれば事実と意見・推測を区別する
なかなか難しいことですが、事実と推測や意見が混ざり合ってしまい、
弁護士が聞いて、なにが事実かわからないことがよくあります。
もちろん、トラブルの渦中にある場合に冷静に対応することは難しいことです。
しかし、難しい状況にあるときこそ、冷静に事実関係を把握することが重要です。

なお、当事務所では交通事故・借金問題については相談料無料としてお気軽にご相談できるようしています。
相談時間も急な相談以外では、若干の余裕を持ってご予約を承っております。
(夜間・休日のご相談も弁護士のスケジュールが許す限りご対応させていただきます)
費用も「30分程度」として、若干の時間超過であれば追加費用はいただいておりませんので
時間を気にせず、ゆっくりとご相談いただければと思います。

サンタクロースと住居侵入罪2012年12月22日

もうすぐクリスマスですね。街も華やかなクリスマスムード一色です。
クリスマスは本来イエス・キリストの生誕を祝うキリスト教の記念日(降誕祭)ですが,
どちらかというと真っ赤な衣装に身を包んでプレゼントを持ってやってくる
「サンタクロース」のイメージが強いのではないでしょうか。このサンタさん,「煙突から家の中に入る」「よい子の枕元にプレゼントを置いて帰る」という行動をとりますが,
これって犯罪じゃないか?,と考えた人もいるかもしれません。
そこで,今回は「サンタクロースは住居侵入罪にあたるか?」について
法律的観点から考えてみたいと思います。
(なお,これは弁護士の一意見にすぎず,確定的な解釈を示すものではありません)

まず,サンタさんは勝手に人の家に入るわけですから
「住居侵入罪(刑法130条)」にあたらないか,という問題が出てきます。
刑法130条は「正当な理由がないのに、人の住居(中略)に侵入し(中略)た者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」と定めており
勝手に人の家に入ってくるサンタさんはこれに当たるとも思われます。

しかしながら,家に入ることに住人が同意している場合には住居侵入罪は成立しません。
サンタさんの風習が一般的になっている現代の日本において,多くのご家庭ではサンタさんが入ってくることを推定的に同意していると考えられます。
したがって,特に事情がなければサンタさんに住居侵入罪は成立しないと思われます。
しかし「サンタだか三太だかしらねぇが,ウチはそんなのはお断りだよ!」という方もおられるかもしれません。
そのようなご家庭は「サンタお断り」という張り紙を煙突に貼っておけば上記同意が否定されることになりますので,
この場合にはサンタさんに住居侵入罪が成立することになります。

なお,住居侵入罪については,最高裁判所平成20年4月11日判決(立川反戦ビラ事件)において
管理権者の意思に反して(ビラお断りという張り紙があったようです)政治的意見を記したビラを投函する行為は住居侵入罪にあたるとしています。
この事件は,憲法21条1項で保障される「表現の自由」との関係で住居侵入罪の成否が問題となったものです。

私の個人的意見としては「表現の自由を尊重すべき」であり,
この場合には「(管理権者の同意がなくても)正当な理由がある」と考えているところですが
最高裁判所は住居侵入罪を認めても憲法21条1項に違反しない,としています。

この最高裁判決に従えば,たとえ一般的に認知されているサンタさんでも
管理権者の意思に反してプレゼントを届けに行けば住居侵入罪が成立してしまうのではないでしょうか。
(サンタさんの行為は表現行為ではないので,より住居侵入罪の成立を認める方向に傾くと思います)

したがって,サンタさんに来て欲しくない場合にはきちんと張り紙をすることが大切ですね(って,そんなご家庭は珍しいと思いますが)。

ヤミ金には手を出さないで!2012年11月30日

早いもので,2012年も残すところあと1ヶ月となりました。
毎年年末になると借金問題でのご相談が増える印象がありますが,
ここ最近は借金問題の中でも,いわゆる「ヤミ金」に借入がある
というご相談が増えている気がします。

ヤミ金とは,正確な定義がないのですが,私は
「高金利での貸し付けと暴力的な取り立てを行う未登録貸金業者」がヤミ金であると考えています。
警視庁のホームページ
多くは暴力団などの反社会勢力,またはそれに類する人物が多いようですが
会社のような形を取るヤミ金も見たことがあります。

さて,ヤミ金の主な手口はこういうものです。
皆さんは,「ブラックOK」とか「電話一本で即融資」などという宣伝文句とともに,
携帯電話の番号が書かれている張り紙(張り紙自体条例に違反する違法なものですが・・・)を見たことがありますか?

ヤミ金は,多くの場合こうしてお金に困っている方
(多くは過去に破産したり高齢であるなどの理由で,銀行や消費者金融からの融資が受けられない方)を狙っています。
また,破産をした人を狙ったダイレクトメールなどで勧誘をすることもあります。
ヤミ金の利息ですが,「トイチ」という言葉を聞いたことがある方もおられるかもしれません。
これは「10日で1割(年利360%)」という法外な金利です。
最近は「トサン(10日で3割,年利1080%)」とか
最初に8万円を受け取って,1週間後に10万円を返す(週2割,年利960%)
というものもあるようです。

もちろん,お金に困ってヤミ金に手を出すわけですから,こんな法外な利息を払えるはずはありません。
払えなくなるとヤミ金は借りた本人だけでなく家族や職場(貸す際に周辺の電話番号を話している方がほとんど)に執拗に電話をかけて催促したり,
脅し文句を交えて過激な取り立てを行います。
精神的に疲弊した被害者は,とにかく取り立てを止めようとその場しのぎの対策をすることになります。
そうするとヤミ金は「利息だけを支払え」と言ったり,
「別のヤミ金から借入をさせて利息を支払わせ,次々に法外な金利の借入をさせる」
ということになり,どれだけ返しても借金がなくなるどころか,利息が増えていく一方になります
俗な言い方ですが「尻の毛までむしられる」結果になってしまいます。

また,借金をチャラにしてやる代わりに,預金口座を作ってこい,と指示されることもあります。
この口座はヤミ金や振り込め詐欺などの違法行為に使われる
(ヤミ金の返済金の振り込み先は,よくわからない人の名義の口座がほとんどです)
ことになるのですが,第三者に譲渡する意図で口座を作った場合,
刑法上の「詐欺罪」に該当し警察に逮捕されてしまいます(近年,この刑事事件が多くあります)。

 では,このようなヤミ金被害に遭わないためにはどうすればいいのでしょうか。
 当たり前のようですが「よくわからない相手からはお金を借りない」ということが一番です。
どうしても生活資金に困った場合でも,社会福祉協議会の「生活福祉資貸付制度金」など,ヤミ金以外でも解決のすべはいくらでもあります。

 もし万一ヤミ金から借入をした場合はどうでしょうか。
 この点について,最高裁判所平成20年6月10日判決は,
「ヤミ金融業者が著しく高利で貸し付けた場合、利息分だけでなく、支払った元本・利息の全額を損害として請求することができる」旨の判断をしました
(http://www.fsa.go.jp/policy/kashikin/yamikin/index.html)
これは,著しく高利のヤミ金については,違法利息はもちろん元本までも返す必要はなく,
払ったお金も返還するよう請求できる(返還に応じてくることはまずありませんが…)ということです。
 したがって,きちんと弁護士などの専門家に相談すれば,ヤミ金の被害からは逃れられることができるのです。
そのうえで,負債があれば破産などの法的処理を,収入が乏しければ生活保護の申請などを通じて,経済的再建を図ることになります。

ただし,ヤミ金は法律に従わないと言う意味で「ヤミ」ですので
弁護士が入ってもすぐに取り立てを止めるとは限りません。
しかしながら,ヤミ金も赤字になるようなことはしませんので,毅然と断り続ければいずれ取り立てはこなくなることがほとんどです。
(どうしても心配な場合には警察に相談することもお勧めします)

一番大事なのは,二度とヤミ金に手を出さないようにしていただくことです。
ヤミ金からお金を借りるのは,切羽詰まってのこともあれば,軽い気持ちで,ということもあります。
弁護士に相談すれば解決する,というのはもちろんそのとおりですが,自分の意思でヤミ金と決別しない限り,またヤミ金に手を出してしまう結果にもなりかねません。
そこで,私の場合には,ヤミ金処理については私の目の前でご本人に直接ヤミ金へ電話をしていただき,毅然と断っていただくことをお願いしています。
もちろん,相手が話に応じなければ弁護士がヤミ金と対応しますが,ヤミ金と縁を切るためにまずは自分で電話をする,その一歩を踏み出していただくことが大事だと思っています。
 
 ヤミ金に手を出さない(一次予防)だけではなく,手を出した人をヤミ金被害から守り(二次予防),再度ヤミ金に手を出さないよう支援する(三次予防),この全てが大切だと思いつつ,ヤミ金と電話でケンカをする日々です。

第55回日弁連人権擁護大会のご案内2012年09月04日

来る10月4日(木)・5日(金)
佐賀市民会館,佐賀市文化会館を会場として,「日弁連人権擁護大会」が開催されます。

人権擁護大会とは,日本弁護士連合会(日弁連)が主催し,
弁護士の使命(基本的人権の擁護と社会正義の実現)に基づき,
人権問題の調査・研究、人権思想の高揚に資するため
毎年1回、東京都以外の地で開催されている大会です。
また,大会にあわせて,毎回多数の弁護士・市民の参加を得て
重要な人権問題をテーマにシンポジウムが開催されています。

この人権大会が,今年は佐賀県にて実施されます。
例年,2日間の延べ人数にして2000名を超えるの参加がある大規模な大会・シンポジウムとなっています。
大会には原則として弁護士のみの参加ですが,
大会前日(10月4日)に開催されるシンポジウムにはどなたも参加できます。

シンポジウムは日弁連の担当委員会が総力を結集して調査研究を行ったテーマについて,
第1から第3の分科会にわかれて充実した発表がなされます。


今年のテーマは,
第1分科会では「どうなる どうする 日本の教育~子どもたちの尊厳と学習権を確保するための教育の在り方を問う」と題し,
姜尚中・東京大学大学院教授による基調講演とパネルディスカッションが,

第2分科会では「強いられた死のない社会をめざして~「自殺」をなくすために私たちができること」と題し,
「夜回り先生」水谷修さんの基調講演や,自殺対策についてのパネルディスカッションが,

第3分科会では「豊かな海をとり戻すために~沿岸域の保全・再生のための法制度を考える」と題し,
有明海や泡瀬干潟(沖縄)などの干潟を含む沿岸域の環境保全についての報告・シンポジウムが
それぞれ実施される予定です。
(詳しくは日弁連のホームページをご覧下さい)

いずれのテーマも,現在の社会における重要な問題点であり,
ぜひ弁護士に限らず,多くの市民の皆様にご参加いただいて,
人権・環境問題に対する理解を深めるきっかけとしていただければと思います。

なお,当事務所は人権大会期間中の10月3日~5日につき,大会準備のために臨時休業させていただきます
皆様にはご迷惑をおかけいたしますが,ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。

離婚の話合いの際に注意すべきこと(3)2012年06月30日

早いもので,2012年ももう半分が終わろうとしています。
ちょっとご無沙汰しましたが,コラムもぼちぼち再開していきたいと思います。


前々回より,離婚のご相談を受ける際によくあるご質問について,テーマ毎にまとめて参りました。
今回は,離婚がもめる原因の一つである,「子どもの親権」についてまとめたいと思います。


(注:本コラムは一般的な内容であり,特に親権の問題は個別のケースによって判断が大きく異なります。お悩みのかたは,必ず専門家に相談して助言を得てください。)

 まず,「親権」とは具体的にどういうものでしょうか。
 民法第820条は,「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」と規定していますが,その具体的内容については規定していません。
 しかし,親権に関する他の条文を見ると,懲戒権や職業(就労)の許可権,財産管理権などが含まれており,ここから「子どもの社会生活全般において,その方針を決定し,子どもに代わって,子どものために契約等の法律関係全般をおこなう」という要素があると考えられます。
 具体的に親権が問題となる場面としては,
例えば進学・就職などの進路決定(進学は学校と子どもとの契約関係です)や,
不慮の事故・病気の際の治療の判断などで親権者の同意が必要となる,
という場面が出てくると思います。 なお,条文上明らかなとおり,親権者は親権を適切に行使する「義務」があり,子の福祉に反するようなケースにおいては,究極的には親権の喪失(民法834条)や,親権の停止(民法834条の2)という制度も準備されています。
 親権は,親の権利であるとともに,親権を適切に行使してもらうという子の権利(親の義務)の側面があるのです。


 離婚の際に問題になるのは,「親権」をどちらに委ねるか,ということになります。
 既に述べたとおり,親権は子どもの法律関係に関する事項が主ですが,その範囲は社会生活全般に及ぶため,
「親権者=子どもの生活全般を監督する立場」と位置づけられます。
そして,子どもの生活全般を監督するためには,親権者が子どもを引き取り,同居して監護することが必要となります。
 ここから,離婚の際,「子どもをどちらが引き取るか」という問題として親権が争点となるのです。


 子どもの親権を巡る問題でよく言われるのが「母性優先の原則」というものです。
 特に乳幼児期については,(生物学的な意味で)子どもの養育の中心となるのは母親であるとして,母親に親権を委ねることが子の福祉にかなう,というスタンスです。
 一般論としては否定しがたいというのが私の実感ではありますが,裁判例や論考を見ると,「母性優先の原則」も絶対ではなく,これを機械的に適用することはかえって子の福祉を害するという意見もあります。私も同様に考えています。


 ここで「子どもの福祉」とは何なのか考えてみましょう。
 一般論ですが,十分な栄養と必要な教育を与えられ,円満な人間関係の下で情緒的に安定して成長できる,ということが望ましいといえます。
 そこから逆算すると,虐待等のおそれがある場合は論外として,まずは安全に生育できる環境というのがあるでしょう。
 また,子どもの環境が二転三転すると,子どもにとっては環境に対応するのが精一杯になってしまいます。
そこで,環境の継続性・安定性というのも重視されています。
これまで主たる監護を担ってきた側に,引き続き監護を委ねるという判断も多くなされているとおもいます。
 もちろん,経済的な側面もある(ただし養育費で調整されるので,絶対的ではないと考えます)でしょうし,実際に子どもを養育監護することができる状態にあるのか(本人が無理であれば,親族の協力を得られるか)という点も考慮されるでしょう。
 何より,子どもも一人の人間です。自分である程度判断できる年齢になれば,子どもの判断を尊重することも必要になってくると言えます。


 このように,親権を決めるにあたっては多様な要素が絡み合っています。
 しかし,誤解していただきたくないのは,「親権はあくまでも子どもの福祉の実現のため」に行使されるものであり,親のエゴであってはいけません。いわんや,相手方に対する怨恨や,自分のメンツだけで子どもの親権を主張することは,かえって子どもの福祉を害することになるおそれがあります。
 親権の問題を考えるに当たっては,「どうすれば子どもが幸せに育つことができるか」という,子どもの立場からの視点を忘れないようにする必要があります。


 現行法では離婚の際にどちらかを親権者と定める必要があるのですが,子どもの福祉の観点から「離婚後の共同親権」制度を設けるべきではないかという議論もあります。この点は,今後もっと議論されて良いと思います。
また,親権を有しない側の「面会交流権」も,子どもの福祉には重要です。離婚しても子どもにとっては血のつながった親であり,(虐待や略取の危険がある等,例外的な場合を除き)両方の親と等しく接する機会を持つことは,子どもの福祉にとって重要なのではないでしょうか。

 不幸にして憎しみあって離婚する場合でも,相手方に対する憎しみを子どもに植え付けないことも,できれば考えていただきたいと日々思っています。

離婚の話合いの際に注意すべきこと(2)2012年05月02日

前回は離婚の際に問題となることについて,簡単に列挙しましたが,
今回は各論として,まず「養育費」について,考え方の概略をご説明したいと思います。

そもそも,養育費というのはどのようなお金でしょうか。

文字をそのまま解釈すると,「子どもを養い育てるための費用」という事になりますが,
私は,これは半分は正解で,半分は不正解だと思っています。

なぜなら,養育費は必ずしも「子育てに必要な費用を全て負担させることができる」ものではないからです。
子どもを育てるには,食費や光熱費,被服費の他,医療費や教育費などの種々の費用がかかります。
多くの相談者は,養育費としてこのような費用を請求できるのではないか,と考えて相談に見えられますが,
この全てを養育費として,離婚した元配偶者に請求できるかと聞かれると,答えは「難しい」となるのです。

では,養育費とはどのような意味合いのお金なのでしょうか。
私は,「離れて暮らす親が,自分と同じ生活水準を子どもに保障するためのお金」だと考えています。
これを前提にすると「いくらお金がかかるか」ではなく,払う側と受け取る側の生活水準の違いに着目して養育費を定めるという考えになります。
実務上は,権利者(子どもを育てる側)の所得と,義務者(養育費を支払う側)の所得を基準に養育費が算定されることも多いのです。

もちろん,合意があれば基準に従わず自由に養育費を決めていいですし,
実際にも子どもの進学等で臨時の出費がかかる時には追加で養育費を払うという合意がなされる場合もありますが
多くの場合(特に調停や裁判になった場合)には,上記のような考え方で養育費がきめられていると思われます。

ただし,裁判で使われる基準も絶対ではなく,個別の事情によって判断がなされますので
自分の場合はどうなるのかについては,ご相談にお越し頂いてご説明させて頂く事になります。

養育費が話合いで決まらない場合には,調停や審判といった法的手続を取ることになります。
これについては,他の問題と共通するので,機会を改めてご説明したいと思います。

養育費でもう一つ問題となるのは,「決まった養育費をきちんと払ってもらえるか」です。

これも,訴訟や調停で定めたか,当事者の話し合いで定めたかによって変わってきます。
訴訟の判決や和解,調停,あるいは公正証書(強制執行を認める文言があるもの)がある場合,
最終的には相手の銀行口座や給与などの財産を差し押さえて回収することができます。
また,和解や調停の場合で,「差押えまでは考えていないが・・・」という場合には,裁判所の書記官を通じて支払うよう勧告をすることもできます(強制力はありません)
当事者の話し合いのみできめた場合,差押え等はできませんので,別途支払督促や調停等を行う必要があります。
このように,法的手続を経るか否かでその後の負担が変わってきますので,話合いできめる場合でも,可能であれば公正証書を作成しておくことが望ましいといえます。

逆に支払う側の収入が減った等の事情で,これまでの額を支払えない場合には,義務者から家庭裁判所に養育費の再計算(減額)を求めて調停をすることもできます。

最後に,ご相談でよく聞かれるのは「養育費を母親(父親)が自分のために使っているがいいのか」というご質問です。
これについては,養育費が「生活レベルを確保するお金」であるという前提に立てば,生活費として使うことは,基本的には問題が無いとご説明しています。
個人のぜいたく品等に使う場合は,全く問題なしとは言えませんが,現状の制度では養育費の使途を強制することはできませんので
この場合でも,「私的に使っているから養育費を払わない」という反論はできません。
そのため,私は養育費については「子ども名義の口座を作ってそこに振り込んでもらう」,
きちんと使途を明らかできるようにする」ということをアドバイスさせていただいています。
受け取る側も払う側も納得して養育費の支払いがなされる事が理想であり,そのために「子ども名義にして家計とは分けて管理する」
「生活費として使った場合でも,何月にいくら引き出したのか明確にする」などの工夫は有効だと思っています。

このように,一口で「養育費」といっても種々の問題があり,後々の紛争を予防するために工夫が必要な点もあります。
その意味で,1人で悩まずにお気軽にご相談いただくことで,よりよい解決を導ける,と思います。
1人で悩まず,まずはご相談下さい。

離婚の話合いの際に注意すべきこと(1)2012年04月20日

当事務所や,弁護士会・法テラスなどの法律相談において,離婚のご相談を受ける事が多数あります。
一度は結婚を約束した夫婦であっても,お互いの考え方の相違や相手に対する思いやりが失われることで,
いつの間にか「あかの他人より憎い」とさえ思うようになるケースも少なからずあり,
法律論では割り切れない,人間関係の難しさを感じることが多くあります。

さて,そんな離婚問題ですが,実は法律的には色々と考えておくべき事があります。

多くの場合,離婚に至るとはいえ,夫婦としてきちんと話合いをして円満に離婚,というケースであり
このような場合には,本来きちんと話し合うべきことも,なんとなくルーズに終わってしまうのではないでしょうか。
もちろん,後々問題が生じないのであれば何よりですし,後々問題が生じても,円満に話合いで解決できる場合が多いのですが
決め事をきちんと決めておかないと,将来何かあった場合に無用な紛争を招くことになります。
もちろん,対立が激しい場合は言うに及ばず,ですが。

離婚のご相談を受ける際,弁護士がまずアドバイスするのは
1 未成年のお子さんがいる場合の親権・養育費
2 財産分与
3 年金分割
です。離婚というと「慰謝料」というイメージが強い方も多くいらっしゃいますが,
慰謝料は全てのケースで認められるわけではなく,また金額も事案によりまちまちです。
それより,「本来主張できる権利」や,「子どものためにはっきり決めておくこと」
をきちんと決めておくことが,後々の紛争の予防につながると,私は考えています。

詳細について書き始めると,とてもじゃないですが分量が足りませんので,
折を見て少しづつご紹介できればと思います。
もちろん,詳しい話や「私の場合はどうなるの?」というご質問は,是非法律相談にお越し下さい,

多重債務の解決法2012年04月05日

近年の不況も相俟って,借金問題でのご相談が少なからず寄せられます。

借金問題については,多くの法律事務所や司法書士事務所のHPでも解説されていますが,
このコラムでも,一度整理してみようと思います。

まず,最初に申し上げておきたいことは,恥ずかしがらずにお早めにご相談頂きたい,ということです。
借金問題も法律問題,しかも典型的な法律問題の一つです。
弁護士に相談することで,後述する「自己破産」や「個人再生」の手続を取るべきかどうか,
あるいは他の解決策があるのかどうか,冷静に考えることができるようになります。

とはいえ,「このくらいなら大丈夫」「わざわざ弁護士に相談しなくても」と思っておられる方も多いかもしれません。
しかし,私の経験から申し上げれば,「返済のために借り入れをしている」のであれば,それは完全に赤信号です。
また,「無担保の借入額(住宅ローンや自動車ローン以外)が年収の3分の1を超えている」「月々の返済額が月収の3分の1~4分の1を超えている」場合も,かなり危険な状況だと考えて間違いないと思います。

このような借金のご相談の場合,解決策を考えるにあたっては,まずは借入先と借入総額,毎月の返済額を確認します。
返済額が,月々の生活を切り詰めれば何とかできる場合,または家族等の支援を得られる場合には,
破産等の法的手続を経ず,債権者との話合いで返済方法を協議し,無理の無い金額で返済をするという「任意整理」という方法が選択肢として上がってきます。

生活を切り詰めても返済が難しい場合,あるいは負債総額が高額な場合には,「自己破産」や「個人再生」などの法的手続を検討することになります。

このうち,「個人再生」は,何らかの理由で破産が選択できない場合,またはローンの残った住宅を温存する場合(住宅ローンは減額せず払い続けることができることが条件)に適します。
ただし,3年~5年間の期間,一定額の支払を行う必要があるので,収入・家計が安定しない場合には向きません。

「自己破産」は,職業上破産手続による資格制限がある場合や,過去に自己破産をされた方以外には,概ね適合します。
ただし,一定の範囲を除いて財産を全て手放す必要があり,また資産がある場合は「破産管財人」を選任して手続が行われることから,裁判所に納めるための費用を準備する必要もあります。

最後に,消費者金融等の,年利20%を超える金利の借り入れ・返済が長期間続いた場合には,いわゆる「過払い金」が発生していることもあります。
また,最終弁済から長期間(消費者金融等の場合は5年)返済を行っていない場合,その借り入れが「消滅時効」によって消滅させられる可能性もあります。

(詳しい手続や各方策のメリット・デメリットはご相談の際にご確認下さい)
このように,借金問題と一口にいっても,負債の状況によって色々な選択肢があります。

弁護士に相談するメリットは,負債の状況を早期に把握し,どのような解決策が望ましいかを考える事にあると思います。
その意味では,病気で病院を受診することと同じではないでしょうか。
病気も法律問題も,早期に発見すればするほど,解決に向けた選択肢が多くなりますし,治療の負担も小さいのです。

悩んで悪化させるより,まずはご相談を!

交通事故と弁護士の役割(民事編)2012年03月23日

皆さんに最も身近な法律問題が生じるケースは何でしょうか。
私は「交通事故」だと思います。
 交通事故は自動車社会である現在,特に佐賀県を含む,自動車が生活必需品である地域では,いつ何時事故に遭遇するか分からないものです。
どれだけ気をつけて運転していても,相手方の不注意で事故に巻き込まれることもあります。
そして,事故が起きれば賠償問題や刑事・行政処分などの法律問題に発展します。その意味で,交通事故は「最も身近な法律問題」なのです。

交通事故が起こった場合,よく言われるのは「3つの責任」がある,ということです。

1つめは「民事責任」,すなわち相手方の損害(怪我,物損など)を賠償する義務があるか,
あるとして賠償金はいくらになるか(よく言われる「示談」や,「過失割合」はここに含まれます)というものです。

2つめは「刑事責任」です。交通事故を不注意で起こし,相手を死傷させた場合,
「自動車運転過失致死傷」(刑法211条2項)という罪に問われます。
(ただし,相手の怪我が軽い場合や,不注意の程度が軽い場合には不起訴処分,略式裁判による罰金ということもあります)
また,事故が飲酒運転や信号無視,大幅な速度超過等,悪質な事故の場合には「危険運転致死傷罪」(刑法208条の2)に問われる事もあります。
その他,無免許やひき逃げ等があった場合には,別途道路交通法違反として処罰されることもあります。

3つめは「行政上の責任」です。免許の点数や,免許停止・免許取消処分がこれにあたります。

弁護士は,いずれの責任においても,依頼を受けて関わることがあります。
刑事責任については「弁護人」として,無罪を主張し,あるいは寛大な処分を求めて被告人(罪に問われた人)のために活動します。
行政責任については,処分の不服申立等で代理人として活動することもあります。
しかし,一番多いのは,やはり民事事件のご相談・代理人活動です。
そこで,(前置きが長くなりましたが)今回は交通事故ご相談・代理人活動について,弁護士がどのように関わっているか,ご紹介したいと思います。

 交通事故遭われた場合,皆様はどのような場合に弁護士にご相談されるでしょうか。
多くの交通事故は,当事者や保険会社との協議の中で「過失割合」や「損害額」を協議し
双方当事者が納得の上和解(示談)して解決,という流れを辿ると思います。
しかし,全てにおいて円満に話合いができるわけではありません。
その場合に弁護士が代理人としてご依頼を受けることが多くあります。

当事務所でお受けするご相談の中でも,「保険会社の示談呈示が適正かどうか知りたい」というご相談を多くお受けしています。
 事故の示談の場合,人身事故と物損事故で対応が異なってくる場合が多くあります。
また,人身事故では適用される保険には「自賠責保険」と「任意保険」があり,裁判をした場合に裁判所が判断する上で参考にする基準もあります。
このように,複数の基準があるため,いきおい基準の呈示もわかりにくくなっています。

その場合に弁護士にご相談いただければ,保険会社の呈示の妥当性や,仮に弁護士に依頼して裁判をする場合にはどうなるのか,などをご回答させて頂くことができます。
また,特に人身損害(怪我・後遺症・死亡)の慰謝料については,複数の基準が存在するが故に,弁護士に依頼し,裁判をする場合とそうでない場合で,最終的な解決金額に大きな違いがあることもよく起こります。

その他にも,ご本人での示談交渉の場合,相手方や保険会社とのやり取りの負担が大きいため,治療に専念できないこともあります。
弁護士にご依頼いただければ,基本的に交渉は弁護士が担当しますので,ご本人の負担を軽減することにもなります。
また,お怪我の程度がひどく後遺症が見込まれる場合でも,診断書の内容や添付資料によっては,お怪我のとおりの後遺症が認められない場合もまれに存在します。
この場合,事後的な再審査・不服申立を行うことになりますが,治療記録やレントゲンの写真を確認し,場合によっては主治医の先生や他の専門医の見解を聞いた上で,記録を整理して不服申立を行う事になり,ご本人で対応することは難しいと言わざるを得ません。
事故の加害者となった場合でも,相手方との交渉を弁護士に任せるという点で,弁護士に依頼するメリットは大きいものがあります。

このように,不幸にして交通事故に遭われた場合,ご本人の負担を軽減し,適正な賠償額を得る上で,弁護士が種々の活動を行っています。

最近の任意保険には,過去のエントリーでもご紹介したとおり,弁護士費用特約が付帯できる場合もあります。
事故に遭われた場合,特に事故でお怪我をされた場合や,ご家族が事故でお亡くなりになった場合には,まずは弁護士に相談して今後の対応についてアドバイスを得ると共に,早い段階から弁護士を代理人とされることが,事故の早期解決に資するものである,と考えています。

当事務所では,交通事故のご相談については,初回無料でご相談をお受けしています。お気軽にご相談下さい。
(なお,本記述は全ての場合に妥当するものではありません。また,本記述は一般的なものであり,これを参考に独自で行動された場合に生じる責任については当事務所及び弁護士は責任を負いかねます)

「弁護士費用特約」はご存じですか?2012年02月23日

近年,各損保会社が販売する自動車保険や火災保険の特約として「弁護士費用特約」(保険会社によって名称が異なる可能性があります)が付帯される場合があります。
この特約は,保険事故(交通事故等)が発生した場合で,事故の相手方に損害賠償請求を行う場合の弁護士費用を保険金で支払うというものです。

依頼する弁護士は契約者が探しても構わないし,心当たりがない場合は保険会社,または日弁連リーガルアクセスセンターが弁護士を紹介することもできるようになっています。
多くの場合は,最大300万円までの弁護士費用が保険で支払われる契約になっていると思います。
この「弁護士費用特約」,自動車保険や火災保険に付帯されることが多いのですが,使える範囲は自動車事故や火災に限られるわけではありません。(自動車事故のみを対象とする特約の場合を除く。詳しくはご契約の保険会社にご確認下さい)

たとえば,「歩行中に自転車にぶつかられて怪我をした」「アパートの上階からの水漏れで家具が毀損した」「車両が盗難に遭い,壊れた状態で発見された」等の,日常生活被害に適用がある場合も多いのです。
もちろん,自動車事故においても「相手方の示談呈示に納得がいかないが,弁護士に依頼すると赤字になるかも・・・」という場合等に強い味方になってくれます。
ご加入の自動車保険,火災保険等に弁護士費用特約を付帯されている場合で,交通事故以外の日常生活被害に遭い弁護士を利用したい場合,「弁護士保険」が皆様の手助けになるかもしれません。
交通事故や日常生活被害で弁護士に頼みたいけど,費用面が心配で・・・とお悩みの場合,まずはご契約の保険会社に「弁護士費用特約」が使えるかどうかを確認してみては如何でしょうか。
(注意:特約の内容,適用範囲は各保険会社の約款,または契約内容によって異なる場合があります。まずはご契約の保険会社に弁護士保険の利用ができるかをご確認されることをお勧めします。)なお,日弁連ホームページでも,弁護士保険に関する説明をみることができます。

遺言書・遺産目録作成のすすめ2011年08月31日

 相続というと,多くの方のイメージでは「縁起でも無い」とか「うちの家族に限ってもめ事を起こすことはない」とお考えの方が多いと思います。
 もちろん,残された家族がもめることなく円満に相続が行われることが最善です。
 しかし,相続ではなく「争続」と書くというジョークがあるように,現実には相続手続きがうまくいかず,争いが続いてしまう場合も少なからずあります。
 相続争いで多いトラブルとしては,相続分や具体的な相続の内容(誰が何を相続するか)を巡るもののほか,
いったい「相続財産として何があるのか」「相続人の一人が相続財産を勝手に私物化しているのではないか」という,相続の範囲を巡るものが多いように思います。
 これらのトラブルを回避する手段として有効なのは遺言書の作成です。
最近は遺言書の作成も一般的になってきましたが,法的に有効な遺言書となると,その様式や内容に一定のものが求められ,簡単に作るというのは難しいものです。
 しかし,遺言書はご家族に自分の気持ちや願いを伝える手段です。
 難しいからといって作らないのではなく,節目節目に作成しておくことが,結局は紛争を予防するだけでなく,何かあったときにご家族が安心できる材料を残すことになると思います。
 また,「遺言書まではちょっと・・・」と思われる方でも,財産の一覧表をまとめておかれてはどうでしょうか。
自分の財産や大事にしているものでも,家族は意外とその内容や所在を知らないものです(特に現金や動産・有価証券)。
きちんと伝えられるうちに,後々の紛争を防ぐ意味でも,家計簿をつけるようにまとめておかれてはいかがでしょうか。
 もう一つ相続で多いトラブルとしては,被相続人が亡くなられてから長時間が経過した相続です。
10年一昔と申しますように,時間が経つとどんどん相続人の状況も変わり,相続関係が複雑化するだけでなく,資料も無くなってしまいます。
 「亡くなられた直後に相続の話をするのもちょっと」というお気持ちもあると思いますが,四十九日や百か日の法要の際など,節目節目に親族が集まった際,相続の話をされることが,結局は無用なもめ事を防ぐ結果になると思います。
 相続は亡くなられた方の財産を引き継ぐだけでなく,「思い」や「気持ち」を引き継ぐ手続きだと思っています。
 それだけに,相続問題で長い期間争うことは,当事者の方々のご負担はもちろん,亡くなられた方の思いや気持ちも引き継がれないままになってしまうのではないでしょうか。
 相続問題は紛争になることなく,円満に解決することが最善ですが,そのためには事前にしっかり考えておかないといけません。
 当事務所では遺言書の作成を含む相続に関するご相談も承っております。
 お気軽にお問い合わせください。

B型肝炎訴訟に1人でも多くの被害者の参加を!2011年08月18日

B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)の感染によって起こる肝臓の病気です。
 一般に、成人が初めてHBVに感染した場合、そのほとんどは「一過性の感染」で治癒し、臨床的には終生免疫を獲得し、再び感染することはありません。
 他方、乳幼児期(0~6歳)にHBVに感染した場合、HBVを異物と判断できずにHBVに持続感染してしまいます。
 ところで,注射針を使い回したり、注射針を取り替えても筒を換えないまま回し打ちをしたりすると、肝炎が蔓延することは戦前から知られていました。
 しかし,厚生省は、この事実を十分に認識していたにも関わらず、またWHOから勧告を受けていたにも関わらず、費用やわずかな手間を惜しんで、昭和63年頃まで予防接種における回し打ちを黙認し続けてきました。
 厚生省は、このようなウイルス感染の危険性のある集団予防接種を、法律によって全ての国民・住民に戦後40年間強制した結果、現在の多数の被害者を生じさせたのです。
 この予防接種におけるB型肝炎被害について,平成18年6月に国の責任を認める最高裁判決が下され,また平成23年6月28日には、B型肝炎訴訟の原告団・弁護団と国との間で、B型肝炎被害者に対して国が正式に謝罪し、被害者を和解によって救済する基準などを定めた「基本合意」が成立しました。
 しかし,現時点では基本合意に基づき救済を受けるためには,訴訟を提起し,所定の要件を満たすことを証明する必要があります。そのためには,まず弁護団にご相談いただき,ご相談者が提訴のための所定の要件を満たすか,及び要件を満たすことの証拠があるかについて,検討させて頂く必要があります。
 当事務所も,全国B型肝炎九州訴訟弁護団・佐賀弁護団に所属し,1人でも多くの被害者の救済に向けて尽力しています。
 B型肝炎訴訟は,今後も随時提訴が行われます。多くの被害者が声を上げることで,訴訟を前提としない,被害者全体の救済に繋がります。
 是非多くの被害者の皆様の,原告団へのご参加をお願いいたします。
 お問い合わせは,全国B型肝炎九州訴訟弁護団・佐賀弁護団(佐賀中央法律事務所内 TEL:0952-25-3121,受付時間 毎週水曜日午後6時~午後8時)までお電話下さい。
(参考リンク)
全国B型肝炎九州訴訟弁護団
厚生労働省

武富士の会社更生2011年08月09日

消費者金融大手の(株)武富士が 会社更生法の適用を受け,更生手続きを行っていることは,皆様も報道等でご存じのことかと思います。
武富士は,これまで利息制限法を大きく超える高金利での貸付を行っており,武富士と長期間の取引の結果,いわゆる「過払金」債権を有する顧客も,報道によれば200万人にのぼる,と言われています。
 この武富士について,最近,管財人より更生計画案が出されています。計画案では,過払金債権者に対する配当は,債権額の3.3%とされています。100万円の過払金がある債権者でも,3万3000円しか支払われない,ということです。
 他方で,武富士の会社更生については,更生計画案の案内が,「計画案に賛成」するよう誘導しているかのごとき体裁であることや,今後の追加配当の見通し,あるいは武富士の更生計画が頓挫した場合の見通しなどの説明が十分になされておらず,多数の債権者が,その内容に大なり小なり疑問をもたれているものと思われます。
 また,そもそも武富士の会社更生手続きは,会社更生の申立代理人が,そのまま管財人に就任していることや,スポンサーの決定経緯に不明朗な点があるなど,手続き面においても疑問が呈されているところです。
 さらに,顧客の犠牲の下,利益を享受した創業者一族や元経営者の責任もあいまいな状態にとどまっています。
 当事務所としては,これまでも多重債務に苦しまれている方の経済的再建を目指して業務を行っていましたが,武富士の不透明な再生手続きは,「過払金返還」を回避するため,と考えざるを得ず,武富士の現在の更生手続きに関しては,極めて問題があると考えております。
 当事務所は多重債務相談について,相談料を無料としておりますが,武富士関係のご相談につきましても,相談料無料でご対応させて頂きます。
「武富士から書面が来たが,どう対応して良いかわからない」
「武富士以外の消費者金融とも取引があったが,これを機会に整理したい」
等のお悩みがありましたら,お気軽にご相談ください。
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