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第14回 国選弁護シンポジウム2017年11月18日



11月17日に横浜にて第14回国選弁護シンポジウム「もう待てない!逮捕段階からの全件弁護の実現を」が開催されたため,勉強のために出席してきました。

国選弁護シンポジウムは,日弁連が主催し2~3年に1回のペースで実施されています。「国選」と銘打っているものの,取り扱い範囲は刑事弁護全般にわたり(名称は国選弁護制度の拡充を求めていたころのなごりのようです),全国的にも最先端の刑事弁護の理論や活動が報告されるイベントということで,今回も全国各地から目算で400名程度の参加があっていました。

今回は「逮捕段階からの全件弁護の実現」をテーマに,第一部では勾留阻止に向けた弁護活動の実践例や各地の弁護士会の取り組みのほか,取調べの可視化を前提とした黙秘権行使の戦略的活用などの報告がなされ,第二部ではアメリカ・イギリス・ドイツでの逮捕直後からの弁護人選任の運用などの視察報告がなされています。

ここで,刑事弁護について少し説明をしておくと,罪を犯したと疑われる人物(被疑者)が逃亡し,あるいは証拠隠滅を図る恐れがある場合,裁判所の令状に基づき被疑者を逮捕し,さらに必要があれば裁判所の決定に基づき最長20日間(逮捕から数えると23日間)被疑者の身体を拘束することができます。
このうち,逮捕後にさらに身体を拘束する手続きを「勾留」といいます。
現在の国選弁護制度では,勾留決定がなされた時点で国選弁護人が選任されるため,勾留前には被疑者や家族が弁護人を選任しない限り,弁護人が付くことがありません。
ところで,法律上は逮捕されたら必ず勾留されるわけではなく,勾留をする場合には逮捕とは別に逃亡・証拠隠滅と言った勾留の要件を満たす必要があります。
実際に逮捕されたが勾留されず釈放されることもあり,また勾留決定が事後的に違法であったとして取り消される(取り消しを求める手続きを「準抗告」といいます)こともあります。実際に私も準抗告により勾留を取り消す決定をもらったことも何度かあります。

このように,逮捕されたとしても長期間の身体拘束を回避することが刑事事件の弁護活動の重要なものの一つになっているのですが,残念なことに現在の国選弁護制度では勾留がなされてからしか国選弁護人が選任されないため,事後的に勾留の可否を争うことしかできず,仮に勾留が取り消されたとしてもそれまでに数日要してしまい,身体拘束の不利益を完全に回避することができない,という問題があります。

過去は,逮捕後はほぼ100%に近く勾留がなされ,人質司法と批判されたこともありますが,現在では検察庁の勾留請求や裁判所の勾留決定が一頃に比べると控えめになっており,数パーセントは勾留されない(それでも95%以上は逮捕から勾留までがワンセット)ようになるなど,少しずつではありますが改善の兆しはあります。しかし弁護士としては「ホントにこの人20日も勾留しなきゃいけないの?」という事案がもっとあるのが実感であり,無用な身体拘束がなされている,という問題意識があるのです。

以上が前置きで,これを踏まえて今回の国選シンポジウムでは「不相当と思われる勾留に対する準抗告を弁護士会レベルで組織的に行い,その結果を集計して運用の改善を求める活動」の報告がなされました。結果として弁護人からの準抗告を待たず裁判所が勾留を却下する割合が増え,また検察庁も勾留請求に慎重になってきたとの報告がなされており,草の根レベルですがこのような活動の有意性が示されています。

また,勾留回避のためには逮捕直後・勾留決定前から弁護活動をスピーディに行う必要がありますが,その実現のために「逮捕されたとの報道が合った場合,被疑者からの要請がなくても弁護士が当番弁護士として出動して対応する」という取り組みの報告もありました。こちらも一定の成果を出しているようで,逮捕直後からの弁護士の支援の有効性を証明するものであると言えるでしょう。

事例報告では,逮捕直後から勾留回避のため身元引受人との調整や被疑者の出頭誓約書の取得に動き,勾留を回避したり準抗告を通したりしたケースの報告がありました。いずれの事例も,そもそも逮捕の必要もあったかどうか微妙な事案ですが,このような事例でも安易に身体拘束が認められているのが現状であって,この点はもっと一般にも理解してほしい部分です。

分量の都合でその他は割愛しますが,今回のシンポジウムでは逮捕直後(できれば逮捕当日)から弁護人が動くことができれば,勾留による身体拘束の長期化を回避できる可能性が十分にあることが示されており,今後の弁護活動のあり方を示唆するものでした。
もっとも,現在の国選弁護制度の下では逮捕直後の弁護活動は空白地帯になっており,また弁護士が手弁当で対応することも限界があります。また,勾留回避を狙っても家族や親族などの身元引受人の手配ができないと釈放を狙うことは困難です。その意味で,費用の面や弁護士へのアクセスなど課題がありますが,まずは「家族が逮捕されたらすぐに弁護士に相談を」ということをもっと一般に普及することが必要なのではないかと思わせる内容でもありました。
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