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(刑事)早期釈放に向けた弁護活動2021年04月08日

弁護士登録以来,いままで多数の刑事事件を取り扱ってきました。その中では逮捕・勾留の必要性を争った事件も多数あります。逮捕勾留を争い,早期の釈放を実現した事件には,実は一定の共通項があります。

それは,逮捕直後に弁護士に相談ができていることと,弁護士と家族が速やかに打合せができていることです。
では,なぜこれが早期の釈放という結果につながるのでしょうか。それには刑事手続,特に逮捕から起訴・不起訴の判断までの手続の流れのなかで,ターニングポイントになる点があるからです。

逮捕がなされる刑事手続では,令状による逮捕または現行犯逮捕がなされてから48時間以内に事件を検察官に送致し,検察官は送致を受けてから24時間以内に逮捕された者(被疑者)の勾留を裁判所に請求するか,または被疑者を釈放しなければなりません。

現行犯逮捕の場合などで,そもそも留置の必要性がないとして検察官送致前に釈放されるケースもあります(この場合は弁護士が警察と釈放を交渉することになります)が,多くの場合には事件が検察官に送致され,その後の勾留を請求するかどうか,検察官が判断することになります。そこで,本稿では検察官送致がなされる事件を前提に解説します。

検察官が勾留を請求し,裁判所が勾留を認める判断をした場合,判断日を含めて10日間の身体拘束が続き,必要があればさらに10日間勾留を延長することが認められています。
そのため,勾留満期までは最長で23日間,身体拘束が続く可能性があります。

23日間の身体拘束が続いた場合,長期の欠勤で職を失ったり,家族の育児・介護に支障がでるなど,身体拘束による本人や家族の不利益は無視できないものがあります。また,職場にも迷惑をかけるなどもあるでしょう。そのため,たとえ罪を犯したとしても,無用な身体拘束はなされるべきではなく,期間も必要最低限にすべきだと考えます。

ところが,これまでの刑事手続では逮捕等の身体拘束が積極的になされ,勾留や勾留延長も安易に認められてきた、と言わざるを得ません。このような身体拘束を利用した取り調べは「人質司法」であるとの批判もなされています。
現在は以前に比較して勾留や勾留延長について慎重に判断されるようになってきていますが,それでも「ホントに必要なの?」と言いたくなるような身体拘束がなされている事例も少なくありません。
このような不必要な身体拘束からの解放を目指す場合,重要になってくるのが,「身体拘束の理由がないことを,できるだけ早期に検察官・裁判所に申し入れて釈放を目指す」弁護活動です。

まず最初のチェックポイントは,検察官による勾留請求をしないよう求める活動です。そのためには,検察官が勾留請求をするかどうかの判断までに,勾留の必要性がないことを検察官に理解させる必要があります。
刑事訴訟法では,勾留の要件として「住所不定」と「逃亡や証拠隠滅を疑うに足りる相当な理由」が必要と規定されています。また,明文の規定はありませんが,「勾留をすることが被疑者や関係者の不利益を考慮しても必要であること」も必要と理解されています。
これらの事由がないことを検察官に説明していくのですが,そのためには被疑者本人の言い分のほか,家族から被疑者の人となりや生活状況,被疑者が勾留されることの不利益などを聞き取り,それを検察官に伝える必要があります。また,逃亡や証拠隠滅をしないよう家族が身元引受人となって監督すると言う約束をし,身元引受書を提出することも多いです。
勾留請求を阻止するためには,これらの準備を「逮捕から48時間以内に」行う必要があります。なぜなら,事件が検察官に送致された段階で,検察官は被疑者の弁解を聞いて勾留するかどうかの判断をしますので,検察官による弁解録取手続の前に資料を添付した意見書を出すことが必要となるからです。
そうすると,逮捕直後に弁護士に面会できたとしても,持ち時間は最大48時間しかありません。その限られた時間内にご家族とも打合せをし,可能な限りの資料を集められるかどうかが,最初の関門である勾留請求阻止のためにもっとも重要になります。

検察官を説得できず勾留請求がなされた場合,次は裁判所に対して勾留請求を却下するように求めることになります。この場合,検察官に提出した資料や意見のほか,検察官が勾留請求に踏み切った理由を考え,それに対応する追加資料を準備する必要があります。また,担当裁判官と面談をして,勾留をすべき理由がないことを説明することもあります。

この段階で釈放を勝ち取れた場合,身体拘束は逮捕から2~3日で終わることになります。

勾留するとの判断がでた場合,これに対する不服申立(準抗告)を行います。
また,検察官が勾留却下に不服を申し出た場合,その判断がでるまでは釈放されません。
勾留決定に対する準抗告が認められるか,勾留却下決定に対する準抗告が棄却されると,最終的に釈放となります。通常これらの手続きは勾留(勾留却下)決定日またはその翌日になされますので,決定当日に準抗告がなされた場合,判断が夜遅くになされることも珍しくありません。

ここまで説明したとおり,勾留を阻止するためのターニングポイントは①検察官の勾留請求阻止,②裁判所の勾留却下決定,③勾留決定に対する準抗告,の3箇所になります。そして,この3つのポイントまでの時間は逮捕から48時間,ないし72時間程度ということになります。そのため,勾留を阻止するためには,逮捕後少しでも早く弁護士が被疑者から選任を受け,家族と十分な打合せを行えることが不可欠になります。
なお,現在の制度では「国選弁護人」は勾留決定がなされてからしか選任されませんので,上記の①と②は国選弁護人の選任を待っていては対応できません。そのため,勾留阻止・早期釈放のためには私選弁護人を選任するしかありません。
私選弁護人の選任には,各地の弁護士会が行っている「当番弁護士」の派遣を求める方法や,個別に弁護士に依頼をすることになります。もっとも,逮捕されている本人は弁護士事務所に電話をすることはできませんので,警察を通じて当番弁護士や知り合いの弁護士に面会希望を出すことしかできません。そのため,ご家族が弁護士に相談に行って頂くのが最も有効です。

もちろん弁護士側もこのような案件に対応するためにはスピーディに動く必要があり,スケジュールによっては対応が難しいこともありますが,できる限りスケジュールを確保して対応に臨んでいます。
もしご家族が逮捕された場合,すぐに弁護士にご相談ください。また,ご自身が逮捕された場合には,すぐにお知り合いの弁護士,または当番弁護士を呼ぶよう警察の担当官に依頼してください。

(半田)
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