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「民事信託」の可能性と問題点2020年03月29日

近年、「人生100年」と言われるような高齢化社会の到来を見越して、「民事信託」が脚光を浴びています。
とはいえ、民事信託は新しい制度であり、その内容やリスクもまだ社会にはきちんと認知されていないという問題もあるところです。

民事信託とは、かみ砕いていうと「信頼できる第三者(通常は家族)に信託財産の所有権を移転して管理処分を任せたうえで、信託財産からの利益を受益者が受け取る」という制度です。

例えば、親が自分名義の不動産を子に信託し、不動産の運用益(賃料等)を受け取るほか、認知症等で判断能力が低下して施設に入るための費用が必要になった場合には当該不動産を売却して施設入所費用を作ることを委ねる、というような使い方があります。
この場合、委託者(親)は不動産の管理を受託者(子)に委ねることで、日々の負担を減らすことができるほか、判断能力が低下して委託者自身で不動産の処分が出来なくなった場合でも、受託者に処分を委ねて必要な資金を得ることができます。また、親が受益者になれば、不動産収益は従前どおり受け取り続けることができます。

そのほかにも、判断能力が低下した高齢者の資産管理・保護のために資産の一部を信託財産としてその他の財産と分別管理をする方法や、障害のある子の将来の生活保障のための信託の活用、個人事業主や中小企業のオーナーの事業承継の手段として、後継者に事業継続に必要な資産を信託する方法などが、民事信託の活用方法として言われています。

これまで、高齢者の財産保護の手段としては「成年後見」や「任意後見」が利用されてきましたが、民事信託は「財産管理に特化した方法」で、かつ「後見では出来ない財産の運用」が可能になるという点で、「財産管理を子どもに任せたいが、後見までは必要ない」というようなニーズをくみ取ることが出来、今後の活用が期待される制度であるといえます。

他方で、民事信託はまだ制度として十分な議論がなされておらず、また信託契約の設計には民法や信託法、税法などの関連法についての正確な知識が必要になるため、不十分な設計に起因するトラブルが頻発している、というのも実情です
例えば、信託契約において信託の中途解除条項の設定が不十分であったため、委託者(親)が信託をやめることができなかった事例や、遺留分を侵害するような信託契約がなされ、信託契約そのものが無効であるとされる事例、受託者の権限の制限が不十分で財産の横領や意に沿わない処分がなされる例などがある、と言われています。
そのほかにも、課税上の問題への配慮が足りず高額の課税がなされる可能性や、信託契約の存続期間が長くなる可能性に配慮しない設計など、問題のある信託契約の設計も散見されているようです。

民事信託には大きな可能性がある一方で、目的や契約設計に十分な検討をせず、民法や信託法等の知識が不十分な状態で設計がなされると、無用のトラブルを招き、かえって不利益が大きくなるという問題が懸念されています。
民事信託は弁護士以外の士業やコンサルタントが積極的に取り組んでいる印象を受けますが、その中には問題のあるケースもかなり存在する、という話も聞いています。
私見ですが、民事信託は柔軟な資産活用・保全の方法として今後積極的に活用が進められることが望ましいと考えますが、そのためにはきちんとした制度設計と、後見等と同様に受託者による悪用防止(弁護士を受託監督者にする、などの方法が考えられます)措置を講じることが不可欠だと思います。

もし民事信託に関心がある、という場合、上記の問題にきちんと対処するためにも、かならず弁護士にご相談されることをおすすめします。
信託契約の設計やリスクマネジメントはまさに弁護士の本分たる領域ですので、ご相談に応じていろいろなご提案ができるものと考えます。
もちろん、弊事務所でも民事信託に関するご相談や、信託契約の設計のご依頼を承ります。是非お気軽にご相談ください。
なお、ご相談料は他の法律相談と同様に1時間程度5000円(税込み)です。
信託契約設計のご依頼に関する費用は、かなりオーダーメイドの要素が高いので、ご希望の内容をふまえたうえでお見積もりをさせていただきます。ご相談の際におたずねください。また、公正証書の作成費用や不動産を信託する場合には登記関連の費用が別途必要となります。
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