新着情報ページ

離婚の話合いの際に注意すべきこと(3)2012年06月30日

早いもので,2012年ももう半分が終わろうとしています。
ちょっとご無沙汰しましたが,コラムもぼちぼち再開していきたいと思います。


前々回より,離婚のご相談を受ける際によくあるご質問について,テーマ毎にまとめて参りました。
今回は,離婚がもめる原因の一つである,「子どもの親権」についてまとめたいと思います。


(注:本コラムは一般的な内容であり,特に親権の問題は個別のケースによって判断が大きく異なります。お悩みのかたは,必ず専門家に相談して助言を得てください。)

 まず,「親権」とは具体的にどういうものでしょうか。
 民法第820条は,「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」と規定していますが,その具体的内容については規定していません。
 しかし,親権に関する他の条文を見ると,懲戒権や職業(就労)の許可権,財産管理権などが含まれており,ここから「子どもの社会生活全般において,その方針を決定し,子どもに代わって,子どものために契約等の法律関係全般をおこなう」という要素があると考えられます。
 具体的に親権が問題となる場面としては,
例えば進学・就職などの進路決定(進学は学校と子どもとの契約関係です)や,
不慮の事故・病気の際の治療の判断などで親権者の同意が必要となる,
という場面が出てくると思います。 なお,条文上明らかなとおり,親権者は親権を適切に行使する「義務」があり,子の福祉に反するようなケースにおいては,究極的には親権の喪失(民法834条)や,親権の停止(民法834条の2)という制度も準備されています。
 親権は,親の権利であるとともに,親権を適切に行使してもらうという子の権利(親の義務)の側面があるのです。


 離婚の際に問題になるのは,「親権」をどちらに委ねるか,ということになります。
 既に述べたとおり,親権は子どもの法律関係に関する事項が主ですが,その範囲は社会生活全般に及ぶため,
「親権者=子どもの生活全般を監督する立場」と位置づけられます。
そして,子どもの生活全般を監督するためには,親権者が子どもを引き取り,同居して監護することが必要となります。
 ここから,離婚の際,「子どもをどちらが引き取るか」という問題として親権が争点となるのです。


 子どもの親権を巡る問題でよく言われるのが「母性優先の原則」というものです。
 特に乳幼児期については,(生物学的な意味で)子どもの養育の中心となるのは母親であるとして,母親に親権を委ねることが子の福祉にかなう,というスタンスです。
 一般論としては否定しがたいというのが私の実感ではありますが,裁判例や論考を見ると,「母性優先の原則」も絶対ではなく,これを機械的に適用することはかえって子の福祉を害するという意見もあります。私も同様に考えています。


 ここで「子どもの福祉」とは何なのか考えてみましょう。
 一般論ですが,十分な栄養と必要な教育を与えられ,円満な人間関係の下で情緒的に安定して成長できる,ということが望ましいといえます。
 そこから逆算すると,虐待等のおそれがある場合は論外として,まずは安全に生育できる環境というのがあるでしょう。
 また,子どもの環境が二転三転すると,子どもにとっては環境に対応するのが精一杯になってしまいます。
そこで,環境の継続性・安定性というのも重視されています。
これまで主たる監護を担ってきた側に,引き続き監護を委ねるという判断も多くなされているとおもいます。
 もちろん,経済的な側面もある(ただし養育費で調整されるので,絶対的ではないと考えます)でしょうし,実際に子どもを養育監護することができる状態にあるのか(本人が無理であれば,親族の協力を得られるか)という点も考慮されるでしょう。
 何より,子どもも一人の人間です。自分である程度判断できる年齢になれば,子どもの判断を尊重することも必要になってくると言えます。


 このように,親権を決めるにあたっては多様な要素が絡み合っています。
 しかし,誤解していただきたくないのは,「親権はあくまでも子どもの福祉の実現のため」に行使されるものであり,親のエゴであってはいけません。いわんや,相手方に対する怨恨や,自分のメンツだけで子どもの親権を主張することは,かえって子どもの福祉を害することになるおそれがあります。
 親権の問題を考えるに当たっては,「どうすれば子どもが幸せに育つことができるか」という,子どもの立場からの視点を忘れないようにする必要があります。


 現行法では離婚の際にどちらかを親権者と定める必要があるのですが,子どもの福祉の観点から「離婚後の共同親権」制度を設けるべきではないかという議論もあります。この点は,今後もっと議論されて良いと思います。
また,親権を有しない側の「面会交流権」も,子どもの福祉には重要です。離婚しても子どもにとっては血のつながった親であり,(虐待や略取の危険がある等,例外的な場合を除き)両方の親と等しく接する機会を持つことは,子どもの福祉にとって重要なのではないでしょうか。

 不幸にして憎しみあって離婚する場合でも,相手方に対する憎しみを子どもに植え付けないことも,できれば考えていただきたいと日々思っています。
copylight