新着情報ページ

安全運転管理者講習の講義を行いました。2013年07月20日

平成25年度安全運転管理者法定講習で,「交通事故と賠償」の講義を担当させていただきました(年20カ所のうちの1カ所ですが)

安全運転管理者制度は、自家用自動車を使用する事業所等における交通事故を防止するために設けられた制度で,一定の要件を満たす事業所において選任する必要があるものです。
昨年よりこの講習のうち「交通事故と賠償」については佐賀県弁護士会より講師を派遣しており,そのうちの一コマを担当させていただいております。

講義ではテキストに沿いつつ,弁護士の仕事から見た交通事故の諸問題についてお話をさせていただきましたが,以下少しだけ抜粋してご紹介します。

1 交通事故による責任としては,刑事罰・民事賠償・行政処分という法的責任のほか,事故を起こしたことによる社会的責任(信用低下など)がある。事業主体にとってはこの社会的責任の低下ということは重大な損害になりうる。だからこそ,事業主体としても交通事故を予防し,不幸にも事故が発生した場合にきちんとした対応をとる必要がある。

2 事故を起こした場合に逃げてしまうと,後々逮捕される可能性が非常に高い(逮捕の要件として「逃亡」「証拠隠滅」防止があるため)。そのため,事故が起こった場合は必ず警察に申告すべきである。また,きちんと警察に申告して現場検証を行うことは,後々事故状況(過失割合)で争いが生じた場合の重要な証拠にもなる。

3 民事賠償で大きく問題になるのは,事故状況がどうであったか(過失割合)というもの。裁判になっても水掛け論になることが多いので,ドライブレコーダーは強い味方になる。

4 事業者は従業員の就業中の事故について使用者責任を負うが,それは勤務時間内に限らない。通勤中の事故も使用者責任を負うし,社用車を従業員のプライベートで使わせていれば,休日の事故でも民事責任を負うこともある。社用車の管理と従業員への指導は重要。

5 通勤や業務で原付バイクや250cc以下のバイクを使っている場合,自賠責保険が切れた状態で運転していないか注意。

6 民事賠償は,死亡の場合は賠償額が数億を超える場合もある。物損でも積み荷や休業損害が出た場合,1000万円以上の損害が出る可能性もある。自賠責は物損については支払われず,人損(死亡・ケガ)についても死亡3000万円,ケガ120万円+後遺症に応じた金額しか支払われないため,自賠責保険だけでは発生した損害を賄うことはほぼ不可能。そのため,任意保険が重要となるが,かかってない場合や賠償上限が不足することもある。リスクと費用を考えて可能な範囲で最大の保障をかけるべき。なお,任意保険には「弁護士費用特約」もあるので,これも活用を。

7 示談交渉がうまくいかない場合,交通事故紛争処理センターなどのあっせん,あるいは訴訟や調停という裁判所での手続きになる。各制度には一長一短があるが,話し合いができる余地があるかどうかで手続きを考える事が多い

8 事故が起きた場合,被害者・加害者ともに取り返しのつかない損害がでる。事故では誰も得をしないので,事故が起きないのが一番。そのためにも,事故で生じる責任をきちんと理解し,万一事故が起きたらどうなるかを意識して無理のない運転を心がけるべき。また,不幸にして事故が起きた場合にも,責任をきちんと理解して賠償に臨む必要がある。

9 交通事故に被害者・加害者双方の代理人として関わった経験から,交通事故でこじれるケースは初期の対応のまずさにあると思う。賠償や責任と謝罪は別問題として,事故が起きたら「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」と謝ることからはじめてはどうか。また,不幸にして重大事故の加害者になった場合,被害者(関係者)からはどれだけ罵られても当然である。これを恐れて謝罪に行かないと関係を悪化させてしまうので,「罵られに行く」という覚悟を決めて謝罪に行く必要がある。
  会社の責任者が同行する場合もあるが,この場合に責任者が事故状況をきちんと把握していなかったり,説明が二転三転すると被害者感情は悪化する。謝罪に急ぐことは必要だが,状況把握と対応の基本方針をきちんと固めて行くことが望ましい。


という趣旨のお話をさせていただきました。
交通事故は日常起きる法律問題ですが,その解決には専門性が要求される分野です。
不幸にも事故が起こってしまったときのために,賠償責任の内容や対応の仕方を普段から意識することは重要です。そのうえでわからないことがあれば,専門家(弁護士)にご相談いただくのが一番なのかもしれません。
copylight