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未成年者による事故についての最高裁判決2015年04月13日

Q:先日,子どもの蹴ったサッカーボールが路上に飛び出したという事故で,最高裁判所の判決が出されました。子どもによる事故の賠償について,どのような理解をすればいいのか教えて下さい。

 民法では,自己の行為の善悪や危険性を理解できない場合(責任無能力者),賠償責任を負いません。未成年者の場合,概ね12歳前後が分岐点といわれています。
 したがって,小学生であれば責任無能力者として賠償義務を負わないことが多いといえます。
 ただし,本人が責任を負わない場合には,責任無能力者を法律上監督する義務を負う者(未成年の場合は親)が,監督義務を怠っていない,又は監督義務を果たしていても事故が起きた場合を除き,賠償責任を負うことが定められています。
 今回最高裁判所の判決が出されたのも,この親の監督義務に関する判断です。
 これまでは,監督義務者の監督義務について高いハードルを設定し,監督義務を果たしたと認められるケースは多くはありませんでした。

 この点について,近時注目すべき最高裁の判決(平成27年4月9日最高裁第一小法廷)が出されました。
 事案については紙幅の都合上省略しますが,できれば裁判所のホームページから判決を見て頂ければと思います。
 最高裁判所の判決では,親の直接の監視下にない場合で,「通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合」については,具体的にその結果が予見でき津場合を除き,ある程度一般的な指導監督を行っていれば,監督義務者としての責任を免れると判断しました。
 この判例を前提にすれば,例えば運動場でキャッチボールをしていて,ボールがそれて通行人に怪我をさせた場合でも,親としては「人が通る場所でキャッチボールをしてはいけない」「キャッチボールをするときは周辺に人がいないか注意しなさい」といった一般的な注意をしていればよい,ということになると思われます。

 もちろん,例えば道路でサッカーをしたり,プロレスごっこをするような,人に怪我をさせる危険性がある行為や,ガラスを割るなどの物を壊した場合には,この最高裁の考え方は及ばないので注意が必要です。
 また,イジメや暴力などの加害行為については,これまでのように厳しい監督義務を課すという判断もあるでしょうし,それが相当であると思われます。
 なお,13歳以上であれば未成年者自身が責任を負うので,この場合には民法714条による監督義務者の責任は生じません(個別に監督義務者独自の責任を問う余地はあります)。
 
 これまでの裁判の流れは,責任を負わない未成年者の行為で被害が生じた場合,被害救済のために監督義務者の責任を広く認めようというものであったと考えられますが,反面監督義務者に過大な責任を課していたことは否定できません。
 今回の最高裁判決は,監督義務者の責任を法律の規定に従って解釈し,双方のバランスを取ったと言えるでしょう。


 それでは,この最高裁判決を前提にすれば,私たちはどうしたら良いのでしょうか。

 まず,誰しも事故に遭う可能性はあります。これは逆に言うと,誰しも加害者になり得るということです。特に小さなお子さんをお持ちの方は,大なり小なり子どもが予想しない行動をしてヒヤッとしたことがあると思います。
 万一事故が起きた場合,今回の最高裁の基準を前提としても,前述のように親の責任が免除されない場合は一定程度残ります。子どもが大きくなったら,今度は子どもが責任を負う場面も出るかも知れません。
 万一責任を負う場面が生じ,死亡や重度後遺症などの重大な被害が生じた場合,賠償額は数千万~数億円になることもあります。車の事故で人を死傷させた場合と同じです。
このような事態にそなえるためには,車と同様,保険をしっかりかけておくしかありません。
 多くの自動車保険や学資保険,生命(傷害)保険などに,日常生活上の加害行為で賠償義務を負ったときに保険でカバーされる特約(日常生活賠償特約)が追加できます。保険料もそう高額ではありませんので,このような保険に入っておくことが必要でしょう。

 また,運悪く被害に遭った場合,加害者に賠償義務がない,あるいは賠償する資力がないと,治療費すら持ち出しになってしまいます。
(自動車事故の場合は自賠責保険で最低限の保障がありますが,自賠責がない場合は相手から支払いを受けるしかありません)
 このような場合に備える保険として,自動車保険には「人身傷害補償特約」というものがあります。最近は自動車に乗車中でなくても人身傷害補償が受けられる特約もあるようです。

 万一の際に相手に対してきちんと賠償ができるように,また万一の際に自分の身を守るために,保険にきちんと加入しておくことが,今回の最高裁判決を受けて私たちができることだと思います。
(半田)
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